子どもは本来、自分で「好き」を見つける天才
前野隆司さん(左)と河村都さん(右)
河村都さん(以下、敬称略) 前野先生のご本、すごく勉強になりました! 幸せな生き方を決める因子を探るという研究、とても面白いですね。セルフチェックをやってみたら、高得点でうれしくなっちゃいました。
前野隆司さん(以下、敬称略) 河村先生が人生を幸せに歩んでこられたことはお顔からにじみ出ていますよ。ご自身が経験された育児の方針も大変ユニークだったと聞き、じっくり伺うのが楽しみです。
日経DUAL編集部 学術研究と教育現場のそれぞれのお立場で「幸せな生き方とは?」を追求していらっしゃるお二人に、今日は「子どもが将来幸せな職業選択ができるために親ができること」について教えていただきたいと思います。子どもには好きな道を歩んでほしいと思う一方で、それがいばらの道と分かっていながら応援する自信はないという声は多く挙がります。特にDUALの読者は夫婦共に実社会で働いていて“仕事の現実”も知っているからこそ、つい先回りしたアドバイスを送ってしまう傾向があるようです。
河村 お母さんたちが先回りしてしまう現状というのは、私が普段伺っている幼児教育の現場でも、本当によく見られますね。子どもが2歳になるくらいから「何を習わせたほうがいいかしら?」「将来のためになる学校選びは……」と情報収集に夢中なんです。でも、そうやって親が先回りして選択肢を用意して子どもに何でも与えるのは、肝心の鯛がどんな魚か、どうやって鯛を釣るのかを教えないのと同じじゃないかしらと心配になってしまいます。
前野 おっしゃる通りですね。本来であれば、子どもは自分の興味や関心を察知する天才で、放っておけば自然と自分が好きなことや楽しいと思えることを見つけられるはず。何もない環境の中でも外に飛び出して走り回るだけで面白がれるのが子どもであり、束縛のない遊びの中から「野球が好き」「虫が好き」と興味のモトを見つけてくるもの。親が情報ばかり集めて、「これとこれとこれの選択肢から選びなさい」と押しつけると、子どもが自分で探し選ぶ力が育たないんですよね。
河村 マニュアルに従うことや、周りの親子と足並みをそろえることでしか安心できない親が増えているとも感じます。
前野 今の大学生もそうなんです。混然とした中から自分で一つを選び取ることができないので、就職活動もとりあえず手当たり次第エントリーする。どこにも強い気持ちが入っていないから、結果はどこからも落とされる。豊かな時代ならではの弊害なのかもしれませんね。一方で、私も親ですから、わが子の将来を案じてつい何かと手を出してしまう気持ちもよく分かります。その点、河村先生はご自身の子育てではどうされてきたんですか?