昭和のマインドセットを変えるには
―― ワンオペ育児からの脱却とも関わりますが、働きながら子育てをするための便利なノウハウは個人単位では蓄積されているのに、なぜかあまり共有されていかない気がします。これは、企業内の働き方改革が各企業では工夫していてもうまく広がらないのと似ていますよね?
中原 淳 東京大学大学総合教育研究センター准教授。1975年北海道生まれ。「大人の学びを科学する」をテーマに、企業・組織における人材開発・リーダーシップ開発について研究。著書多数">
中原 淳 東京大学大学総合教育研究センター准教授。1975年北海道生まれ。「大人の学びを科学する」をテーマに、企業・組織における人材開発・リーダーシップ開発について研究。著書多数
中原 その通りですね。どちらも難しいところは、“やらないと分からない”ところなのです。育児って、やってみて初めて子どもがかわいくなるところってあるじゃないですか。それを経験したことのない人が上長だと、理解できずにうまくいかない状況ですよね。また、性別役割分業の意識も、いったん確立されると、とてつもなく解除に時間がかかりますね。みんなのマインドセット、信念というのは、一度インストールされるとアンインストールされにくいものですが、育児や性別役割分業なんかはその典型なんですね。世の中は変わってるのに、昭和なままのおじさんたちがいたりするんです(笑)。しかし、今は端境期だと思います。今こそ、少しずつ変わっている時期だと感じています。僕らは変化を信じましょう。
―― なぜ企業は子どもを持つ世代が働きやすい環境に、すぐ変わっていかないんでしょう?
中原 やはり感情論ではなく、数字や目に見えるもので、ステークホルダーに訴えていかないと世の中も組織も変わらないのです。いくら、「ワーキングマザーに働きやすい環境を」と言っても企業の経営者には、なかなか伝わりません。いや、伝わるといいな、と思うんですよ。個人的には、そういう世の中の声を拾って欲しいと思います。でも、正攻法では難しいこともあるのです。攻め方を見直さなければなりません。わたしたちはそこで知恵をしぼりましょう。
まず、経営者を知ることです。経営者は、短期的に利益をあげること、組織にメリットが生じることに関心があるのです。経営者にとってもっとも大事なことは、「もうかるの?」「組織にとっていいことあるの?」ということです。それが仕事であり、役割なのだから、やむをえないところもあるのですよ。だから、企業を働く人にとってフレンドリーにするためには、経営者が気にかけるロジックに基づいて、数字を提示し、説明を行う必要があるのです。