体を壊してしまったら人生ベースでの経済的損失が大きくなる
深野康彦(ふかの・やすひこ) 業界歴29年のベテランFP。さまざまなメディアを通じて、家計管理の重要性や投資の啓蒙などの情報を発信。最新刊は『55歳からはじめる 長い人生後半戦のお金の習慣』
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深野康彦(ふかの・やすひこ) 業界歴29年のベテランFP。さまざまなメディアを通じて、家計管理の重要性や投資の啓蒙などの情報を発信。最新刊は『55歳からはじめる 長い人生後半戦のお金の習慣』
日経DUAL編集部(以下、――) 「100年ライフ」3回目は、FPの深野康彦さんに聞きます。深野さんは家計相談も数多く手掛けていますが、30代、40代からの相談も多いのでしょうか。
深野康彦さん(以下、敬称略) インターネットの媒体で、読者からの投稿に回答するスタイルでの相談も手掛けていますが、少し前に、うつ病の方からの家計相談がありました。これが非常に大きな反響を呼び、心身の病気に悩む現役世代の方々からの相談が殺到したのです。編集部や私が想定していた以上に、悩んでいる人が多いことが分かりました。
私は29年間この仕事をしていますので、メール相談であっても、相談者の方の文章の行間から気持ちを強く感じます。いただいたメールは「つらくて仕事を辞めたくて仕方がない」という若い世代からのSOSです。
―― 読者にも、悩んでいる人がいるかもしれません。深野さんはどんなアドバイスをするのでしょうか?
深野 ケースバイケースですが、結婚していてパートナーがいる場合、1人で相手を支えようとして2人とも倒れることは絶対に避けなければなりません。人生100年時代だからこそ、体を壊してしまったら人生ベースでの経済的損失が大きくなるんです。若くして病気になった場合は経済状況などを見て、仕事をセーブしたり仕事を休んだりしてもいいと思うんです。良くなったらまた働けばいい。ともかくそこを乗り越えないと、老後どころではなくなってしまう。
ですから読者のみなさんにはまず「つらかったら、SOSの声を上げよう」「病気なら、悪化させないように、頑張りにブレーキを掛ける」をおすすめします。これは最初に言っておきたいことです。
住宅ローンを完済し、老後資金を一気に貯める
―― 老後資金は、30代、40代から意識したほうがいいのでしょうか?
深野 「老後資金の準備は早いほうがいい」はその通りですが、30代40代の方に特に言いたいのは時間軸という概念を大切にしてほしいということです。つまり、65歳から自分の年齢を引き算したとき、あと何年あるかということです。35歳の人が老後のことばかり意識すると、その間の30年のことが欠落してしまいます。メリハリは大切ですが、子どもと出かけて思い出をつくるという経験まで犠牲にする必要はありません。
お金は「近い未来」を優先して準備していくものです。30代に老後のお金が不安だと相談されたら、「iDeCo(イデコ、個人型確定拠出年金)を始めなさい」と言います。「でも掛け金は、月々5000円※でいいからね」と。まだ若い世代の老後準備は「準備をしている安心感」があればいいんです。要するに老後に向けて頑張りすぎない。
―― やっぱりどこかで、老後資金に向けたアクセルを踏むことが必要になってくるわけですよね。そのタイミングはいつなのでしょうか?
※記事を修正しました。「掛け金は、月々1000円でいい」とあったのは、正しくは「月々5000円」です。お詫びして訂正いたします。