夫婦でローンを組むならデュエットを検討?
フラット35には夫婦連生団信・デュエットという仕組みがありますが、これも残ります。夫婦でローンを組んだ場合、「ペアローン」といって、夫と妻それぞれがローンを組みますのでローンが二つある状況になります。住宅ローン減税を二人で分けて使える、所有権は双方に発生する、といった状況になります。ただし、どちらか一方が亡くなると通常は亡くなった側だけのローンが免除されます。
フラット35の場合はペアローンではなく「連帯債務」と呼び、二人で一つのローンを組みます。こちらも住宅ローン減税や所有権の扱いはペアローンと変わりませんが、違いはローンが一つか二つか、という部分です。
連帯債務の場合、通常の団信では主債務者が亡くなればローンは全額消えますが、連帯債務者が亡くなった場合にローンは消えません。夫が主債務者であれば妻が亡くなってもローンはそのまま、ということです。
それに対してデュエットに加入していれば一方が亡くなったときに、二人分のローン、つまり全額の返済が免除されます。当然その分だけ団信保険料も割高になりますが(従来ならば約1.56倍)、新制度では金利に0.18%上乗せとなります。
夫婦連生団信は一部を除いて(三井住友銀行のクロスサポートなど)、ほとんどの金融機関では準備をしていない仕組みです。
なお、デュエットと3大疾病保障の併用はできません。
上乗せ額を計算してみた
それぞれどれくらいの上乗せになるか計算をしてみます。条件は先ほどと同じ、3000万円を35年ローン、1.4%で組んだ場合です(繰り上げ返済は考慮せず)。
デュエットの上乗せ分は毎月2642円、35年間の総額で約110万円の差、3大疾病の上乗せ分は毎月3534 円、総額で約178万円の差となります。
いずれもそれなりの額ですが、毎月の上乗せ分を見ると3大疾病保障は実質的に3000万円が保障される3大疾病保障保険です(ローンの返済が進むほど保障額は減ります)。これが3534円は激安です。少額な保障のがん保険や3大疾病保障保険に比べると非常に手厚い保障です。
デュエットはお得か?
二人でローンを組んでどちらが亡くなっても3000万円のローンが消える、というデュエットの保証は3000万円の生命保険と同じです(3大疾病付きの団信と同じく、返済が進むほど保障額は減ります)。一人分の保障は初めから金利に含んでいますので、もう一人の実質的な保険料が月額2642円と考えれば悪くはない金額です。
夫婦でローンを組んだ場合、連帯債務はどちらか一方が主債務者となります。すでに説明した通り、団信で返済が免除されるのは主債務者が亡くなったときです。したがって、主債務者ではない側が同じだけ(この場合は毎月9万円)保障される生命保険に加入すると保険料はいくらか?と考えると妥当な水準が分かります。
毎月9万円を35年間受け取ることができる生命保険(収入保障保険と呼ばれるもの)を30歳の女性の保険料で計算すると、たばこを吸わず健康な人の割引で安くなった保険料でもデュエットのほうがちょっと安いくらいの水準です。
生命保険は年齢が上がれば保険料も上がりますが、団信は年齢と関係ありませんので高齢になるほど団信のほうが有利になります。デュエットの保険料の水準は生命保険と比較しても悪くはありません。
なお、どちらもデメリットは通常の保険と違って途中でやめられないことです。
また、繰り上げ返済によって借入額が減れば、団信であれば自動的に負担は減ります。金利の上乗せ分が保険料である以上、元本が減れば自動的に支払額も減るからです。これは繰り上げ返済によって保障が減るという状況ですから、良いか悪いかは何ともいえないところです。
負担が減るなら良いじゃないか、と思われるかもしれませんが、繰り上げ返済をすればその分だけ貯金が減って保障も減るという状況です。それなら繰り上げ返済をしなければいいのかというと、今度は金利負担が重くなってしまいます。
これは団信が住宅ローンの残額と保障がリンクしている仕組みからくるデメリットですから、デュエットはやめて普通の生命保険に入る、あるいはフラット35であれば団信自体をやめて、生活費と住宅ローンの両方を考慮して多めに生命保険に加入する、といった判断もありです。この辺りの判断はかなり複雑になりますので、慎重に判断していただければと思います。
フラット35に限らず、7大疾病や8大疾病など団信の上乗せは加入すべきかどうか?と考えると案外難しい選択になりますが、数百万円程度の中途半端ながん保険や3大疾病の保険に入るくらいならばガッツリと手厚く保障される団信の3大疾病を選ぶことも悪くない、という判断も十分あります。ちょっとややこしい部分もありますが、団信と保険は必ずセットで考えてください。