「完璧じゃなくていい」 養子縁組後も家族の絆はどんどん強まった
―― 現在上のお嬢さんはアメリカで大学生、パートナーは中国へ単身赴任し、中村さんは下のお嬢さんと二人暮らしだそうですね。
歌手を目指してアメリカの大学に通う長女(写真右)と、アメリカと中国での生活を体験して帰国した次女(写真中)。次女はダンスに夢中!(撮影:井坂英彰)
中村 4年ほどアメリカに家族みんなで暮らしたときもありました。今は夫が中国に渡り、上の娘は歌手を目指してアメリカで頑張っています。
一時期は下の娘も中国で暮らしたのですが、日本のほうが良くなって戻ってきました。彼女はダンスに熱中していて、しょっちゅう私の事務所にも来てくれます。今日はお弁当を作ってくれたの。
―― 素敵ですね。時に離れて暮らしても、家族の絆が深いことが伝わってきます。
中村 家族があちこちに住んでいると大変ですけどね。お金はかかるし、よく喧嘩もするし。でも完璧じゃなくてもいいじゃない? 人生は大変なもの、家族は色々問題があるもの。それでも、下の娘がうちに来てくれたことで、私たち家族はものすごくたくさん話をするようになりました。本当によかったと思っています。
時々次女が作ってくれるというお弁当を、中村さんは幸せそうに見せてくれた
―― 長崎で見ていたご両親の働き方や生活と、今の中村さんの状況は大きく違うかもしれません。ご両親から学んだことは何ですか?
中村 私と親とは価値観が違う世代、世界に生きてきました。二人とも戦争のため高校に進めず、中卒で苦労して私たちを育ててくれました。感謝しているし、尊敬しています。厳しくて頑固な父だったけれどおかげで小さいころから自分で決める強さができた。家族に反対されることで考えて、選ぶ、という訓練ができたんだと思います。
子どもたちのことは放任の母だったけれど、いつも愛情は感じていたし、その分色々な大人に支えられて育つことができた。両親が共働きで手取り足取りでなかったからこそ、自由にやってこられたんだと思います。私は、やりたいと思ったことは、とりあえず何でもやってきたし(笑)。これからもきっとそんなふうに生きていくと思いますよ。
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地方で女性が大学に進むことが少なかった時代に、一人上京し、手に職をつけ、遊学をする。起業し、国際結婚をして、養子縁組という選択をする。アメリカで暮らし、現地でも働く。中村さんの人生は次々と新しい挑戦に挑むような生き方です。「親は反面教師」と言いながらも、その力強くまっすぐな生き方には、仕事や子育てに懸命に生きたご両親への尊敬の念が感じられました。
(取材・文/玉居子泰子 写真/品田裕美 構成/日経DUAL 加藤京子)