「仮説」→「検証」→「考察」 自由研究で思考のサイクルが身につく
さらに、辻先生はこうアドバイスをします。
「高学年になったら、押さえておくべき5つの項目に、さらに『仮説』や『発展学習』を加えるとより魅力的な自由研究になります」
「『仮説』は実験の結果を予想するものです。仮説を立てておくと、実験をしながら、こうなるに違いないと意識しながら進めていくことができます。それが合っていたときは『○○だから、そうなんだな』と理解を深めることができますし、違っていたときは、大きな驚きとともに『なぜ、そうなったのだろう?』と考えます。つまり、物事を考える出発点となります」
「研究者が実験を行う際には、常に『仮説』→『検証』→『考察』の順番で進めていきます。これは、物事を考える手順と同じです。自由研究のまとめは、こうした思考のサイクルを身に付けるのに最適なのです」
「この思考のサイクルはあらゆる場面で生かされます。例えばテスト受けるときに、ただ受けて、結果を見て終わりでは意味がありません。自分がこうだと思って書いた答えが間違っていたとき、なぜ間違えたのか、どうすれば正しい答えを出すことができたのか、ほかにやり方はなかったのかと考えることができれば、それは次に生かされます」
豆腐作りやカラフル焼きそばにチャレンジしたあおいちゃん(小4)
「『発展学習』は、実験結果から考えられることや出てきた疑問に対して、さらに調べることです。例えば、焼きそばの色が変わる実験をして、『色』に興味を持ったら、様々な食品の色について調べてみるのもいいでしょう」
「自由研究は期限内に提出することだけが目的ではありません。実験をして興味を持ったら、さらにその興味を広げたり、深めたりすることもできます」
「また、何かを調べたり、実験したりするのが面白いと思えば、世の中の色々なものに興味を持つことでしょう。その好奇心の入り口となるのが自由研究なのです」
最後に、今回、4つの実験に挑戦してくれた小学4年生のあおいちゃんの自由研究のまとめを紹介します。
広がる好奇心 「今年の自由研究は、宇宙について調べたい!」
こちらが小学4年生のあおいちゃんが書いた自由研究のまとめです。
壁新聞タイプは、切ったり貼ったり、配置の自由度が高いのが魅力。工作感覚で作業に楽しめる
今回、あおいちゃんは4つの実験に挑戦してみましたが、中でも一番印象に残ったのが「カラフル焼きそば」だったそう。そこで、「カラフル焼きそば」についてまとめてもらいました。
あおいちゃんがまとめの形式で選んだのは、壁新聞。壁新聞は学校の社会見学のときに取り組んだことがあったそうで、あおいちゃんにとっては取り組みやすく、レポート形式などよりも工夫ができる点が気に入っているようです。
確かに、写真を入れたり、絵を入れたりと賑やかな誌面になっていて、ステキですね。
小学生新聞に掲載されていた壁新聞なども参考に、写真や文字の配置を決めていく
辻先生からはこんなコメントをいただきました。
「まとめで大事な5つの項目をしっかり押さえつつ、写真の配置やコマの割り方にセンスを感じさせますね。焼きそばの色の変化を写真だけで見せるのではなく、自分で色を書いて見せているのがいいですね。とても分かりやすいです」
後日、お母さんにまとめ作業をしていたときの様子を聞いてみました。
「まず、まとめに必要な5つの項目を確認しました。アントシアニンの性質については、まだ学校では習っていないので、親子で調べました」
「まとめ作業の所要時間は、イラストも入れたので、写真や枠作りなど下準備込みで2時間弱くらいでした。レイアウトを決めるときに『こうしたほうがいいんじゃない?』とお互いに見せ方のアイデア交換をしたのですが、それがある種の親子工作の時間みたいでとても楽しかったです」
「親から見ても、とても完成度の高いものができたので、『これを自由研究として学校に提出したらいいんじゃない?』と言ってみたら、『いや、今年の自由研究は宇宙についてやりたい』と。来週、家族で佐久市にある宇宙通信研究施設と子ども宇宙博物館に行く予定なのですが、そこで宇宙について調べてみると言っています。これまで以上に張り切っていますね(笑)」
この夏、親子で自由研究を楽しみましょう!
(取材・文/石渡真由美 構成/日経DUAL 加藤京子)