模試の解答で弱点を分析 覚えているようで覚えていないことがいっぱい!
都内に暮らす佐藤龍太くん(仮名)は、鉄道とピアノが好きな小学6年生。中学受験経験者であるお母さんの意向で、小3の2月から大手進学塾・日能研に通っていますが、塾のクラスではいつも下位層をさまよっています。
「宿題はちゃんとやっているんです。でも、入塾してからずっと成績が上がらなくて、最近はモチベーションも下がっています。努力が少しでも成果に表れれば、モチベーションも上がってくると思うのですが・・・・・・」と、お母さんの香奈子さん。
それを聞いて、西村先生は、まず直近の算数の模試の答案用紙を見せてもらいました。
中学受験のプロ家庭教師・西村則康先生
龍太くんに向かって、西村先生はこう言います。
「うーん・・・・・・、惜しい間違いをしているね」
見ると、単位で間違いがありました。
「龍太くん、55a(アール)と55ha(ヘクタール)はどっちが広い?」
「えーっと・・・・・・」と、龍太くん、すぐに答えられません。どうやら、単位の感覚がつかめていないようです。
そこで、西村先生が縦横1cmの四角形を書き、「この四角形の面積は何c㎡?」と聞きました。
「1c㎡」と即答する龍太くんの表情は、そんな簡単なことを聞くなよ!という感じ。
続いて、縦横100cmの四角形、10mの四角形、100mの四角形、1000mの四角形を書いて、同じ質問をします。
すると、龍太くん、さっきのような勢いがありません。時間をかければ答えられるのですが、ずいぶん時間がかかりすぎです。
その様子を見て、西村先生は次のような図を書きました。
縦横100cmの四角形、10mの四角形、100mの四角形、1000mの四角形の面積は? 図で書き出してみると分かりやすい
「いいかい? 龍太くん。中学受験の入試に出る単位というのは、面積か体積か容積にだいたい限られている。だから、この3つの単位は必ず覚えておくこと」
「アールとかヘクタールという言葉は、普段、龍太くんの生活ではあまり使わないよね? だから、どのくらいの広さなのかイメージしにくいと思うんだ。でも、こうやって、『1aは一辺10mの正方形で、1㎡の100倍』『1haは一辺100mの正方形で、1aの100倍』と覚えておけば、それがどのくらいの広さなのか分かるよね? 例えば、こういうふうに図で覚えておくと、忘れないよ」
西村先生はその後も、図形問題や最大公約数の問題、速さの問題など、模試の答案用紙を見ながら、龍太くんの弱点を分析します。
基本を押さえるだけで後伸びの余地 理由も理解して覚えることが大事
すると、すべての問題で共通していることがありました。それは、その単元の基本となる「覚えておくべきこと」の知識があいまいだったということです。
「例えば、三角形の図形問題では、三角形の角度の決まりをきちんと覚えておく必要があります。そのときになぜそうなのか理由まで言えなければ、本当に覚えたということにはなりません。『なんとなく二等辺三角形に見える』ではダメなのです」
「速さの問題も同じです。ただ公式に当てはめるだけでは、本当の意味で理解したとは言えません。公式を覚えるときも、なぜそうなのかまで理解して覚えることが大事です」
「中学受験の算数入試は、公式を当てはめるだけの問題はまず出ません。その基本を知っている前提で、切り口を変えた問題が出ます。ですから、基本が理解できていない子に、いくらたくさんの宿題をやらせても、それは意味がないのです」
「逆に基本を理解さえできていれば、後からでも成績は伸びます。龍太くんはまず、基本のおさらいをすること。そして、『覚えておくべきこと』をきちんと覚える必要があります」
龍太くんと対話をするように、「覚えておくべき」基本を教えていく。手を動かしながら考えていくことが大切。お母さんは向かいの席で様子を見守ります