緑に埋もれる園舎でありたい
青々と茂り、むせるほどの勢いの緑あふれる東京・世田谷区の祖師谷公園を抜けたところに、真っ白な壁が現れる。装飾もないが、なんとなく丸みがあり、周囲の緑に飲み込まれてしまうことをむしろ受け入れているような柔らかなフォルムの建物。それが、今年4月、全国初で都市公園内に誕生した「茶々そしがやこうえん保育園」だ。
外観は窓もほとんどなく、本当に保育園かと思ってしまうのだが、園舎に入ってみると予想に反して明るい。うまく天井窓からの自然光を取り入れる工夫があちらこちらにされていて、外に向けた窓がない部屋でも室内の圧迫感は感じないようになっている。凹型の園舎の真ん中部分である屋上スペースは、床(下の階にとっての天井)がガラス張りの箇所が多く、一階まで採光がとれる。また、2階の部屋は屋上に面して大きな全面窓となっており、部屋も明るい。
地域住民に愛されてきた公園の敷地内に保育園ができるということで、建設前は周囲の不安もあったのは事実。しかし、景観を害さないこと、騒音を抑えることなどにできる限り配慮し、設計されたのが、この真っ白で柔らか味のある園舎だった。自然に馴染むこの園舎に、建設後は理解が広まったそうだ。
1階入ってすぐにあるランチルームは、幼児たちが毎日食事を食べる部屋。天井窓からの自然光が気持ちいい
昭和54年に最初にスタートした「茶々保育園」は、埼玉県入間市の茶畑の真ん中に建てられた。だから“茶々”保育園。そんなスタートを思わせる、自然の中に建てられた14園目がこの茶々そしがやこうえん保育園であり、立地を生かした「自然公園×クリエイティブ教育」というコンセプトの元、保育を行っている。