TOEIC900点でも外国人との会話に悪戦苦闘

―― 加藤さんご自身は、どのように英語を学ばれたのですか?

加藤 実は、元々英語は苦手だったんです。どうしたら上達するんだろうと悩んでいた中学生のとき、ある予備校の「ペーパーバックの読み方講座」を受けてみたら、ひと夏かけてペーパーバックを1冊読むことができたんです。すると、読む力だけでなく、ライティングやリスニングの力まで上がりました。

 でも、話すことはなかなかうまくできませんでした。大学卒業時点でTOEIC900点はとったのですが、新卒で入った会社では外国人だらけのプロジェクトに入れられ、悪戦苦闘。仕事を通じてなんとか話せるようになってきたころに、自分が欲しかったサービスとして、今のレアジョブを創業したという感じです。

―― 現在も何か英語学習をしているんでしょうか?

加藤 子どもに英語の絵本を読み聞かせていると、ビジネスでは出てこない単語も覚えられるのでなかなかいいですよ。「yucky(まずい)」なんて単語はビジネスではなかなか使いませんが、子どもとの会話ではよく使います。

 他には、同じように語彙を増やすという意味合いで、「ナショナルジオグラフィック」の英語版を購読したりしています。仕事や家庭で話しているだけだとどうしても覚えられる単語が限られてしまうので、こういう勉強は継続していきたいですね。

―― 日本人は、みんな中学校から何年も英語を勉強しているのに、実際に外国人とは話せないという人が多いです。今の日本の英語教育についてはどう思われますか。

加藤 小学校から英語を必須科目にすることなど、文部科学省が主導している方向性は基本的には間違っていないと思うのですが、英語教育という枠を出て、全体を俯瞰したうえで欠けていると感じる点が二つあります。一つは、日本語におけるスピーキング力の強化です。「英語は読み書きだけでなく、話す力が大事」という認識は高まってきていますが、国語の話す力は見落とされがちです。そもそも母国語で話す力がない人が、英語でしっかり話せるようになるはずがありません。国語における「話す力」の強化が必要だと思っています。

 もう一つは、異文化を認識し、理解する力です。日本人は、それがかなり苦手なのではないでしょうか。同じ日本人の中ですら、「若者」「老人」「男性」「女性」などと、すぐにカテゴリーで分けて、同質性の中でまとまろうとしますよね。しかし本来、英語をしゃべるシチュエーションは、国や肌の色、年齢、性別などバックグランドが違う様々な人が混在している中でコミュニケーションをとるはず。今の教育では、そういった異文化体験の機会が欠けていると感じます。