「やだー!」と誰も言わない授業の濃度
学校には8時からだんだんに子どもたちが登校してきます。そして1日のスタートは体を動かすことから。先生も生徒もみんな輪になって並び、ストレッチと体幹トレーニングをします。ほんとうは、授業の前に校庭でひと遊びできたら、というのが理想なのですが、現在、設備としてはビルの中の2つの教室のスペースなので、その中でできることをしています。
朝、こうして体を動かすのは、脳を動かすことにつながるからでもあります。脳と体は切り離して考えがちですが、脳も体の一部であることは間違いありません。脳にも血が流れているから、運動しないと血液循環も栄養も豊富に届かなくなってしまいます。
この後、授業を行っていきます。授業形態は学年ごとに分かれたり全員一緒に車座になったりと様々です。国語、英語、算数、プログラミング、サイエンス、社会、体育、書道やアートの時間もあり、子どもたちは授業ごとに、自分の机といすごと移動することもあります。授業の合間はトイレに行ったり水分補給したり、次の授業の準備をしたりすることで精いっぱい。休憩したり遊んだりする時間はほとんどありません。それでも誰も、「やだー」とか「だるい」なんて言いません。それは授業が楽しいからです。
子どもたちが勉強を飽きずに続けるためには、まず楽しくなければなりません。子どもは楽しいことは飽きませんが、楽しくなかったら、あっという間に逃げ出します。子どもを曳きつける楽しい授業内容のためには、ただお仕着せの教科書をそのまま読んでいるだけでは無理です。先生もクリエーティブな準備が必要となります。それは負担も大きくて、大変なことだと思います。
もちろん、授業中、子どもたちの集中力が切れることはあるでしょう。でもそれは、子どもが怠けているのではなくて、やはり教える側の問題が大きいのだと思っています。ここでは、どういう態度で授業を聞くのかは先生ごとにルールが異なります。きちんと前を向いて静かにするのがルールの先生もいれば、しっかり授業に参加できていれば、多少隣の方を向いていてもかまわない、という先生もいます。それでもとにかく、今やるべき授業の内容に集中していることが大切なんです。
自分自身を振り返っても、楽しかった学校ではしっかり学習ができました。生徒が授業中「内職」して他のことをしているのは、やっぱり教える側に問題があるのだと、私は思っています。先生が怠けている学校は、それはやっぱり楽しくないですよ。先生の工夫があるからこそ、授業は楽しく、「もうやだー」と逃げ出す子がいない学校になるのです。
ただ、一人ひとりが飽きずに集中できる授業内容を作るには、大人数のクラスでは難しいでしょう。1クラス8~12人が、先生一人で目が届いて充実した授業内容になる理想的な人数と言われています。これは私だけの感覚ではなく、他の探求系の塾の先生と話をしたときにもこの人数が理想だという話になりました。子どもの個性を尊重して、どこを伸ばすのかを考えながら指導するには、少人数制であることは必要なんですね。そうでないと、アクティブラーニングはできません。
左上から プログラミング主任 マシュー・ジョン・ルッソ先生、英語主任 キャリー・ホクナニ・ゴメス先生、理科担当 サム・デイビッド・フェリックス先生。/左下、トライリンガルキッズ(学童)担当のソフィア・ペドラザ先生、補助教員の堀由美子先生