定員が2倍になってもまだ足りない都心部
待機児童問題が一向に解消しないという苛立ちが広がっていますが、国や自治体が手をこまねいているわけではありません。待機児童問題が大きな社会問題としてクローズアップされたこともあり、国は保育園の予算を増やしていますし、自治体も年に複数の認可保育園を整備するようになっています。
「保育園を考える親の会」が首都圏の市区の5年間(2011年~2016年)の認可(認可保育園、認定こども園の保育機能部分、小規模保育、家庭的保育など)の定員拡大状況を調べたところ、平均で約1.4倍になっていることが分かりました。中には、2倍以上に増えている自治体もありました。
ところが、さらによく調べてみると、定員を大幅に増やしているのに、入園決定率が相変わらず低い自治体も少なくありませんでした。
首都圏で定員拡大率が大きかった自治体を取り上げてみました(詳細は次ページ)。
同じように定員を増やしていても、都外の自治体のほうが入園決定率は改善しています。都内の自治体は待機児童対策を頑張っているけれども、ニーズの増え方も大きく、間に合っていないという状況があることが分かりました。
例えば、港区は、5年間で認可の定員を2倍以上に増やしていますが、入園決定率は5割弱です(認可外の港区保育室を含めても6割程度)。また、都心部の自治体では認可保育園の園庭保有率も低下しており、急激な待機児童対策のデメリットも現れています。
都心部はもともと保育園が少なかったところに、若い世代の都心回帰が起こって保育ニーズが急増したことが大きく響いています。これらの自治体では、入園しにくく、よい環境も確保しにくいという二重苦を抱えているのです。
■東京都の園庭保有率
(出典:保育園を考える親の会『2015年度版・2016年度版 100都市保育力充実度チェック』より作成)