目の成長、生まれてから就学前までが勝負
駒込みつい眼科(東京都文京区) 三井義久(みついよしひさ)院長。北里大学医学部卒業、北里大学眼科入局、清水市立病院眼科、北里研究所メディカルセンター病院眼科、せきや眼科、みつい眼科開設。文京区眼科医会会長
自分たちが子どものころより、めがねをかけている子どもが増えているという印象はありませんか? 小学生以上であれば、成人同様に「近視」の矯正のためにかけているケースが増えるのですが、実は未就学児の段階では「斜視」「弱視」の治療のためにかけているケースが多くあります。
駒込みつい眼科院長 三井義久先生は、「子どもの目は、身体が大きくなったり言葉を覚え発するようになったりするのと同様に、生まれたときから機能しているわけではなく、成長していくものです」といいます。
成人の目の長さ(眼軸長)は約24mmですが、出生時の子どもはこれが17mm前後です。目の長さは3歳前後で約23mmと、ほぼ成人の長さに達します。ちなみに眼軸長が長くなると近視になり、短くなると遠視になります。
「もし成長過程において異常があると、目の正常な発達が望めない場合もあるため、早めに発見し、治療する必要があるのです」と三井先生は言います。
「目の成長過程における異常」のなかには治る可能性のあるもの、放っておくと十分に視力が育たなくなるものがあります。その原因として「斜視」と「弱視」が挙げられます。
学術的には子どもの目の成長は生まれたときから8、9歳くらいまでと言われますが、実際には「小学校入学前くらいに視機能が大きく成長しますし、目に異常がある場合の治療は、就学前をゴールの目標に据えるんです」と三井先生。
そう、小学校入学前までが、目の成長の勝負時なのです。
子どもの視力は2歳で0.4、0.5くらい、3歳で0.6、0.7くらい
「子どもが生まれたときからよくモノが見えてるのかと聞かれれば、それはもちろん“NO”ですね。視力は生まれたときから1.0出ているわけではありません。2歳で0.4、0.5くらい、3歳で0.6、0.7くらいを目安に、診療では見ています」
子どもの目の成長には視器という目の道具と、視機能の両方の発達が関わりますが、視器は生まれる前にほぼ完成していると三井先生は言います。
「例えば“視神経”は胎生8~9カ月に完成しますし、カメラに例えるとフィルムに当たる、眼底一面に広がる薄い膜状の組織“網膜”は、特に視細胞が密集している中心部の“黄斑部”以外は胎生9カ月までに完成します。また黄斑部も生後2~3カ月には完成しますし、“水晶体”(カメラでいうところのレンズに当たる)は10~12歳で成人と同じになるとされています(厚さ約3.6mm、直径約8.8mm)」
一方、視機能は小学校入学前くらいまでに、光の刺激を受けながら一つひとつ学習し、発達していくものだと言い、「視機能の発達は、中枢神経系の発達と協調作用があって初めて達せられるものです。外界からの情報の80%は視覚を通して得られますので、徐々に刺激を受けたり見たりすることによって脳の神経系も発達します」。
ところが斜視や弱視といった異常があると、それが妨げられてしまうわけです。
では、斜視とはどんな状態なのでしょうか。