5歳から80歳までの16万人もの脳のMRI画像を読影・解析してきた瀧 靖之先生は、子どものころからゲームやタブレットといったデジタル機器を長時間使うことで、脳の発達に影響を及ぼす可能性があると警鐘を鳴らします。
大きく分けると、「脳を成長させる様々な経験をする機会の喪失」と「コミュニケーション能力の低下」の2つだそうです。今回は、前者について詳しく解説します。
脳を成長させる様々な経験をするチャンスを失う
私たちの脳では、脳神経細胞のニューロンが道路のようにネットワークを張り巡らせ、情報を伝達し合っています。この「道路」が効率的につながり、情報を素早く伝達できている状態が「頭がいい」「記憶力がいい」などということになるそうです。
子どもの脳では、生まれた直後から思春期ごろまで、以下のように「道路作り」が盛んに行われています。
瀧 靖之
東北大学加齢医学研究所教授。医師。医学博士。東北大学加齢医学研究所、及び東北メディカル・メガバンク機構で脳のMRI画像を用いたデータベースを作成し、脳の発達や加齢のメカニズムを研究している。読影や解析をした脳のMRI画像は、これまでに16万人分にのぼる。一児の父。
どんどん作られてはいるものの、使わなければ頑強になりません。大人になっても脳は発達しますが、最も発達が著しい子どものときに脳に刺激を与えることが大切だ、と瀧先生は話します。
「本を読む、楽器を演奏する、スポーツをする、手先を器用に使う、友達と体を動かして遊ぶといった経験を通して、道路は太く、頑丈になっていきます。しかし、一人でゲームをしたり、タブレットで動画を視聴したり、ネットサーフィンをしたりといった時間が増えると、脳を成長させる貴重な機会を失うことになります」
「もちろん悪い面ばかりではなく、ネットで知らなかったことを知り得たり、脳トレのようなゲームで空間認知能力などが高まったりと良い面もあります。しかし、子どもの脳の成長に大切な様々な刺激を受ける機会が減ってしまうことのほうが大きな問題だと捉えています」(瀧先生)
では、子どもの脳をぐんぐん伸ばす「刺激」とはどんなものでしょうか。また、子どもとデジタル機器の付き合い方のポイントについて、次ページ以降、お伝えします。