出生時からの成長曲線が目安になる
東京女子医科大学を卒業後、同大学病院小児科に入局。現在同病院にて糖尿病・内分泌疾患を中心に一般小児科診療に従事。日本小児科学会専門医、日本糖尿病学会および日本小児内分泌学会所属。1型糖尿病サマーキャンプの運営に携わる。
今、「3歳児健診で肥満を放置すると、その後の肥満リスクも高まる」という指摘がされています。
獨協医科大学小児科の市川剛氏らの報告によると、乳児期に上昇したBMI(Body Mass Index:肥満判定の国際基準。体重=kgを身長=mの2乗で割った数値)がいったん減少した後に増加に転じる現象である「adiposity rebound(AR)」の発症時期が早いと、小児期・成人期における肥満の一因となるといいます。幼児のBMIの正常値は15~18なのですが、3歳時にこの数字に収まっていたとしても、BMIが上昇していれば肥満になるリスクが高いのだというのです。
学校保健統計調査によると、肥満傾向児は小学生になると減少傾向にあるといいますが、幼児期の影響が思春期になってからリスクになるとあれば、乳幼児期こそ肥満対策をしなくてはいけないのではないか…。そんなことを考えてしまいます。
東京女子医科大学 助教の立川恵美子先生によれば「今の時点での身長、体重のバランスも大事ですが、1点だけではなくて出生時からの経過を成長曲線でチェックすることが重要」なのだといいます。
現在、一般的に使われている成長曲線とは「横断的標準成長曲線」というもので、ある年に測定した子どものデータを基に、各年齢の身長・体重の平均値をつないで作ったものを指します。
2010(平成22)年の厚生労働省「乳幼児身体発育調査 調査結果」より
2010(平成22)年の厚生労働省「乳幼児身体発育調査 調査結果」より
子どもの母子手帳には、より分かりやすく成長を記録できるページがあり、身長、体重がこの曲線内に入っているかどうか、曲線の描き方がずれていないかどうかをチェックすることが、肥満(低身長)の目安になるといいます。
「母子健康手帳」には子どもの発育を記入できるページがある
「乳児期にカウプ指数(3カ月~5歳の発育状態の程度を表す指数。BMIは小児領域ではカウプ指数とも呼ばれます)が高かったとしても、幼児~学童期にそのまま肥満傾向が続くかというと、必ずしもそうではありません。特に0歳児の場合、ハイハイをするようになり、運動量が増えれば自然とスリムになっていくものです。ですから無理にミルクを控える必要はないと言われています」
体重の増加は摂取している栄養だけで決まるわけではなく、運動量や睡眠時間など生活習慣も関わってくるのは、その後も同じなのです。
「例えば成長曲線を見てお子さんが上限のギリギリにいたとしても、その曲線が大幅にずれていなければ、多くの場合、病気などが潜んでいる可能性は低いと考えられます。ただしこの幅に全員が入るとは限らないので、だからこそ記入すること、その後の変化を追うことに意味があると考えられます」と立川先生。成長曲線から逸脱するような場合、ホルモン異常など病気が潜んでいるケースもあるのです。またホルモン異常がある場合、肥満だけでなく低身長などにも影響が出てくるといいます。