わが子の教育グランドデザインを描こう
昨今、東京23区内では、小学校6年生児童の30~40%が私立中学に進学するそうだ。都心から少し離れた埼玉などでは、15%くらいになる。受験率は、私立進学率のほぼ倍の数値だ。地域によって割合は変動するものの、多くの子どもが受験勉強をしており、関心度が高いことがうかがえる。
周りに受験をする子が多ければ、親子ともども気になるだろう。「うちの子も受験させたほうがいいのかしら」と考える人も少なくないはずだ。では、中学受験をするかどうか、何を決め手にすれば良いのか。
ポイントは3つある。
・家庭の状況(支払い能力があるか、親が“伴走”できるか)
・子どものタイプ
・将来どうなってほしいか、どういう教育を受けさせたいか
その中でも一番大切なのが、子どもの将来をどう描き、どんな教育を受けさせたいか、というグランドデザインを描くことだと、森上さんは言う。
森上展安(もりがみ・のぶやす) 森上教育研究所社長。中学受験塾の経営コンサルティング、中学受験に関する種々のリサーチやソフトウェアの製作、また私立中高一貫校経営のコンサルティングを始めとする私学支援事業などを展開する。2004年から父母向けセミナー「わが子が伸びる親の『技』研究会」を開催している">
森上展安(もりがみ・のぶやす) 森上教育研究所社長。中学受験塾の経営コンサルティング、中学受験に関する種々のリサーチやソフトウェアの製作、また私立中高一貫校経営のコンサルティングを始めとする私学支援事業などを展開する。2004年から父母向けセミナー「わが子が伸びる親の『技』研究会」を開催している
「うちの子にはこういう仕事をしてもらいたい、から始まり、こういう大学に入れたい、じゃあ高校は、中学は、と逆算していくのが良いでしょう。一般的にベースとなるのは、だいたい両親の学歴や経験です。それに加えて、自分の子どものタイプを見極めつつ、どうするのが良いか考えてみてください。女の子であっても、社会に出て活躍するのが当たり前の時代になりました。これを機に、夫婦でわが子のキャリアについて話し合われることをオススメします」
親自身が中学受験を経験していれば、子どもにも勧める人が多い。ベースは親の経験でも構わないが、事例としては少ないため、場合によっては子どものタイプと合わないこともある。狭い選択肢の中で決めるのではなく、いろんな家庭のいろんなタイプの事例を聞くと良いそうだ。周辺地域のママ友に聞いてみたり、お友達のお兄さん・お姉さんがどんな学校に通い、どんなふうに学んでいるか聞いてみたりすると、わが子に合ったサンプルと出会えるかもしれない。
さらに、切実な問題としては、支払能力があるかどうか。中学から私立に入れるとして、650万円以上の年収がないと厳しいそうだ。年収が満たない場合、祖父母から援助が受けられるかもポイントだという。
また、親の海外・地方転勤があるかどうか、親の雇用が安定しているか、離婚危機がなく夫婦関係は良いか、なども影響が大きい。家庭の状況が安定していないと、親が子どものサポートをしたり、指導したりすることができないためだ。
「これまでの事例を見ていると、やはり成績が良い子であれば、受験させようという親御さんは多いですね。他には将来医師にするために、あえて地方の全寮制の学校に通わせて、勉強に専念できる環境を、と望む方もいます。お子さんに発達障害があり、より適した教育が受けられる海外の学校を目指すケースもありますよ」
何のために、将来どうなってほしくて、中学受験をさせるのか。根本的なビジョンを策定することが、スタート地点だ。