「男女ともバリバリ企業」でママ社員が感じる罪悪感

―― 全体として、育休を取った女性社員を取り巻く現状はどのようなものでしょうか。

山口 育児中の女性社員が困難を感じる二つのタイプの企業についてお話しましょう。

 一つは、男性主体の企業です。こうした企業では、女性社員が働きやすい制度は整えていますが、育成や登用には消極的ですし、ましてや出産した女性には活躍を期待していません。そして女性社員自身も、自分が会社に期待されていないことに気づいている。こうした企業では、出産しても活躍してほしい、という会社からのメッセージを伝えたとしても、女性社員はこれまで感じてきた会社の風土の中でそれが実現されることが信じられず、悶々としてしまいます。会社と女性社員の間の溝が広がるばかりです。

 もう一つは、社員が男女平等にバリバリ働く風土がある企業。こうした企業では、女性社員は産後も働き続けますが、子どもを持ったことで、これまでのように働くことは難しく、結果的に戦力ダウンしていることを申し訳なく思いながら働いているという傾向があります。子どもを育てている女性社員が無理をし過ぎてしまう印象がありますね。

 「男女ともバリバリ企業」でママ社員が感じる罪悪感を払拭するためには、「どうしても出産前のようには頑張れない時期はある」という共通認識を企業内に浸透させる必要があります。社員が出産や育児で頑張れない時期に差しかかったときには、企業は長期的な視野で成長を見守るべきです。そういう姿勢がある会社では社員も安心して働くことができます。「3年後でも6年後でも、会社は待っていてくれる」という安心感あれば、社員も焦らず頑張れます。

 以前から女性活躍に取り組んでいて、既に管理職における育児中の女性比率が高い企業では、「今は大変だけど、また活躍できる」と、出産する女性社員自身も、管理する側も思うことができます。難しいのは、まだその手前のフェーズにいる企業群ですね。現在、育休を取得したい女性社員がたくさんいる。会社も「子どもを産んでも頑張れ」と言うけれど、実際に産後、管理職になった女性社員はあまりいない。「今現在、ロールモデルがいない」という現実が、彼女たちをものすごく悩ませるのです。管理職側も、「子どもがいて本当に頑張れるんだろうか」と疑心暗鬼になっていることが多い。1人実例がいるだけでも、全然違うんですけどね。