地域の方がくつろげる場所を。自家焙煎の本物コーヒーを作り続けて50年
日経DUAL編集部 カフェ・バッハは1968年に創業ということで、ご夫婦で始められたんですよね?
カフェ・バッハの店主、田口文子さん
田口文子さん(以下、敬称略) はい。まだ20代のころでしたが、私の生まれ育ったこの大好きな下町で、「地域の方がくつろげる場所を作りたい」「日本一おいしい本物のコーヒーを味わっていただきたい」と、夫とコーヒー店を始めました。もうすぐ創業50年になります。
―― 店内でもバッハの曲が流れていましたが、やはりバッハがお好きでお店の名前を付けられたんですか?
田口 そうですね。私も主人も音楽の世界を大事にしていまして、中でもバッハが好きなのでぜひお店の名前にしようと。名前の使用許可をいただきに、バッハの生まれ故郷であるドイツ(当時は東ドイツ)の駐日大使館に伺ったこともありました。「バッハという名を汚さないよう、良質なコーヒーを作り続けます」とお伝えすると、「それはうれしい。ぜひ頑張ってください!」とエールをいただいて。その後、本場の東ドイツの大使館にも足を運ばせていただきましたね。
―― すごい! 大使館のお墨付きをいただいたわけですね。コーヒーはもちろん、ケーキやフィナンシェなどお菓子類も豊富ですが、開業当時から出していたんでしょうか?
田口 いえいえ。最初は、お菓子類はメニューになかったんです。パンはお出ししていましたが、メーカーのものを使っていましたからね。開業して25年、コーヒーの自家焙煎の正しい技術が確立できて、一区切りついたころ、「やっぱりコーヒーにはお菓子があったほうがいいね」と思い立ちまして。それから大阪府にある辻調理師専門学校まで習いに行って、一からお菓子作りを学び、スイーツを提供するようになったんです。
―― 途中から一念発起して学ばれたとは。もともとお菓子作りはお好きだったんですか?
田口 実はそれまでお菓子は日常的に作っていたわけではなくて。でも、時々お店で音楽会などのイベントを行った際には、自前のケーキを皆さんに振る舞っていたんですね。来ていただいたお客様にコーヒーだけお出しするのも寂しいですし、バッハの苦いコーヒーに合う「甘めのスイーツ」を一緒に味わっていただきたくて。もしかしたら私自身、開業した当時から「お菓子作りへの思い」は始まっていたのかもしれませんね。
―― 今日は、そんなお菓子作りへの思いがあふれる田口さんにとっておきのスイーツをご紹介いただけるとのことで楽しみに参りました。ぜひ作り方を教えてください!
創業当時から地元に愛され続けてきたカフェ・バッハ。地域の音楽家を集めて音楽会など数々のイベントも開催し、コーヒーと共に田口さんお手製のケーキや軽食なども振る舞っていたそう