自分で考えて作った個性溢れる作品

 昼のランチ休憩を挟んで14時ごろまで集中して編集作業を終えると、いよいよ発表会の準備。編集作業をすべて終えた子どもたちは「何かやることありますか?」と申し出て、準備の手伝いを始めた。15時くらいになると、参加している子どもたちの親や、商店街関係者たちが集まってきて、発表会の開始。司会進行役もすべて、子どもたちが自ら運営する形だ。想像以上の出来栄えに大人たちは驚きつつ、楽しんでいた。

 以下の3つの作品は、既にユーチューブで公開されているものだ。

<小4男子、HOKAくんの作品。実は小4にして有名ブロガー。ユーチューバーを目指す!>
https://www.youtube.com/watch?v=gFI95Jcpga4&t=67s

<小3女子の作品。お母さんのプレゼントに商品券でローズマリーを購入!>
https://www.youtube.com/watch?v=2iARm3806pM&t=184s

<小1男子の作品。大好きな焼き鳥を商品券で購入。鶏皮を選択したのが渋い!>
https://www.youtube.com/watch?v=HWP9ixlfr6c

 発表会終了後、参加した子どもたちに感想を聞いてみたが、みな「取材や撮影も編集もみんな楽しかった!」と口を揃える。ほとんどの子どもたちが、「家に帰ってからも、自分でまた動画を作ってユーチューブで世界に発信してみたい!」と続けて動画を制作することに意欲を見せていた。

勉強や学びで一番、大切なものとは!?

 同様のプログラムが8月上旬に鎌倉でも開催されたが、子どもたちの反応は同じようなものだったと永井さんは言う。

 「鎌倉で開催したときも、翌日にはユーチューブにアップしたいからやり方を教えてくれとみんなが聞いてきました。これは、なかなかスゴいことだなあ、と。よっぽど楽しかったんだと思います。勉強するとか、学ぶうえで何が一番大事なのかと言えば、“自分からやること”じゃないですか。それは、“生きる力”と言い換えてもいいのかもしれません。このプログラムをきっかけに自分で面白いことを見つけ、自発的にどんどんやっていける子どもたちが増えるといいなあ、と思っています」

 またこのプログラムの目的は「動画を撮って表現すること」ではあるが、そのなかで得てほしいものがあると永井さんは言う。

 「自分で表現することによって、“誰かに貢献する楽しさ”を味わってほしいということですね。今回で言えば、荏原町商店街のPR動画を作ることによって、商店街の人たちが協力してくれたし、喜んでくれた。その感覚を原体験として心に刻んでくれることが僕にとっての最高のゴールなんです。なぜなら、それが味わえると、人というのは、何ごとでも頑張れると思うんですよね。こんなに喜んでくれる人がいたんだから、もっと喜ばせたいとか。だから、子どものうちに貢献する喜びを体験できるというのは、最高の教育だと思います

荏原町商店街のPR動画を披露する発表会が最後に開催された
荏原町商店街のPR動画を披露する発表会が最後に開催された

 こども宣伝部のプログラムは、実はこの夏からスタートしたばかり。現在は不定期の開催だが、今後はプログラムの開催数を徐々に増やしていき、定期的に開催できる体制を整えていくことを検討しているという。

 「今後はプログラムの開催場所も増やしていきたいですし、定例開催にしてスクール化していきたいと考えています。例えば、1泊2日のプログラムを毎月1回ずつ開催するとか、毎週末に通うとか。“自分からやる力”が身に付く習い事の一つとして認知してもらえるような状態にまで持っていきたいと考えています」(永井さん)

 夏休みの自由研究にも提出できるプログラムということで注目され、ニュース番組で取り上げられるなど話題にもなっているようだ。既に永井さんの頭のなかには、次なる展開が巡っている。こども宣伝部が今後、どのように進化しながら展開されていくのか、楽しみだ。

(取材・文・写真/國尾一樹)