すべての子は本来、自分から「学びたい」気持ちを引き出すことができる
「人は誰でも自ら育とうとする力を持っていて、子どもが自分から知りたいと思ったときの吸収力は、大人が計り知れないほどのエネルギーを持っている」とは、日本にモンテッソーリ教育を広めることに半生を懸けた、故・相良敦子さんの言葉です。
イタリアの女性医学博士マリア・モンテッソーリ(1870-1952年)が、子どもが「自ら育とう」とする環境づくりに力を入れることを創案したモンテッソーリ教育。相良さんによると、1〜6歳までの幼少期に脳の発達段階に合わせて、子どもの内なる好奇心や興味に沿って五感を動かす体験をさせることで、知性や知的好奇心などの自主性を育むことができるといいます。
「子どもが一人でできる環境を大人が整える」という観点で、特に幼児期の関わりを重要視するモンテッソーリ教育。しかし、集中力や自主性は幼児に限らず、生きる力を備えるために一生関わってくる大切な能力です。小学生のわが子に、十分な自主性や集中力、やる気が見られないと感じたとき、モンテッソーリ教育の観点から、大人にはどのような関わりが求められるのでしょうか。
集中力の低下はどこから生まれてくるのか?
日本モンテッソーリ教育綜合研究所附属「子どもの家」副園長の櫻井美砂さん
1978年に日本モンテッソーリ教育綜合研究所の付属施設として開設された附属「子どもの家」には未就学児が通う「幼児部」の他に、週に一度放課後に、他校の小学生が通う「小学部」があります。小学部に通う子には、幼児期にモンテッソーリ教育を受けた子もいれば全くの未経験という子もいます。小学生でモンテッソーリ初体験という子どもに対するアプローチを副園長の櫻井美砂さんに聞きました。
「モンテッソーリ教育の環境に慣れていない子は、最初のうち、主体的に自分の好きな勉強をするということに戸惑う子もいます。でも、環境を整えて適切なサポートがあれば、いつからでも子どもたちの『学びたい』という気持ちを育むことはできますよ」と櫻井さん。
「お子さんに『集中力がない』『学習意欲が湧かない』と悩み、小学生低~高学年から、門をたたく親御さんはたくさんいます。そんなとき、私たちは、まず集中力の低下がどこからきているのか、ということを考えるようにしています」と、適切な環境を整えるうえで、まず集中力の低下の原因を見極める大切さを指摘します。
「子どもは本来、自分の興味のあることについては高い集中力を発揮するものです。つまり、学校の授業中や学習中に集中力が下がってしまっているというときは、そのもの自体に対する興味が薄れてしまっている状況だということ。他にも様々な原因が考えられますが、集中力不足の根底にあるのが自信のなさであることも多いんです」
「授業の内容に理解できていないところが残ったままであったり、親や教師の介入が多過ぎてミスを指摘されてばかりいると、その教科への苦手意識が芽生えたり学習全般に対して自信が持てなくなったりすることがあります。集中力を育むためには、興味を持てるような関わりや環境を整えていくことが大切です」
次のページからは、「子どもの家」の活動を参考に、子どもが学習に興味を持ち続けるための、具体的な学びのサポートについて見ていきましょう。