わが子のためと思うほど、「こうあるべき」という「子育ての正しさ」に縛られ、窮屈な思いをしている人も多いのではないでしょうか。仕事と家事、さらには「親の育て方が子どもの将来を決める」とばかりに肩ひじ張って育児に奮闘し続ける――。気づけば、親の思い描くビジョン通りに子どもを歩ませようとしてしまっているかもしれません。そこで今回は、日本の常識に縛られることなく、グローバルに活躍してきた経験を生かして子育てをしてきた6人の女性をクローズアップ。海外で子育てする人、自身の海外経験を日本での子育てに生かす人、グローバル企業に勤めて多様性を身に付けた人の「レールを敷かない子育て」に迫ります!

グローバル基準の子育て

真夜中の会社からの呼び出し電話を機に起業の道へ

 2013年から、米シリコンバレーで女性起業家向けの合宿型トレーニングプログラムなどを提供するWomen’s Startup Labを創業した堀江愛利さん。その取り組みからCNNの「10 Visionary Women(10人のビジョナリーウーマン)」、マリ・クレール誌の「20 Women Who Are Changing the Ratio(男女比を変える20人の女性)」にも選ばれました。22年には自治体や米国大使館からの依頼を受け、日本でも女性の起業をサポートするAmeliasを立ち上げ、起業家プログラムを提供。10カ月で高校生を含む740人の女性に起業家精神の育成を実践し、これからの未来づくりに貢献しています。

 プライベートでは米国籍の中国人男性と結婚し、03年に長男、06年に次男を出産。出産後にネットビジネス分野で起業。米国で子育てしつつ、長男と次男がそれぞれ10歳、7歳の時点でWomen’s Startup Labを立ち上げました。

 実は、もともと起業するつもりはなく、最初から女性支援にも関心があったわけではなかったそう。ですが、「自身の出産・子育てがキャリアの大きな転機になった」と言います。

 「長男を出産した頃は、シリコンバレーのスタートアップ企業のマーケティング部門で働いていました。ところが、真夜中にエンジニアから『どうしたら消費者に受け入れられるか相談したいから、今すぐオフィスに来てくれ』という電話がかかってくることもあり、これは今までの働き方はできないな、と。それなら自分でビジネスをしたほうがいいと思い、スタートアップ企業を退職し、自分でネットを使ったビジネスを始めました」

 当時は1日のタイムスケジュールを見直し、時間の使い方で「ある工夫」をしたことで「ビジネスも母親業もしっかり両立できた」とか。さらに親が自ら教育カリキュラムをつくるような幼稚園に子どもを通わせたり、子どもを持つ親同士で育児クラブを立ち上げたりと子どもたちの教育にも全力を注ぎました。

 いったい、そのパワフルさはどこから生まれてくるのでしょうか。海外に目が向くきっかけになった堀江さんの小学生時代にさかのぼり、順を追って聞いていきます。

詳しくチェック!
・母親からは「自分の意見を持ちなさい」と言われて育った
・「A student(優等生)でないほうが英語力が伸びる」と言われ、0.2%でも可能性があればチャレンジするマインドが生まれた
英語は完璧でなくてもいい、まずはパッションが大事
・米IBMを3年で辞め、スタートアップ企業へ
・ビジネスのチャンスは「こんなにもたくさん」転がっていた
Women’s Startup Lab代表 堀江愛利さん
Women’s Startup Lab代表 堀江愛利さん