わが子のためと思うほど、「こうあるべき」という「子育ての正しさ」に縛られ、窮屈な思いをしている人も多いのではないでしょうか。仕事と家事、さらには「親の育て方が子どもの将来を決める」とばかりに肩ひじ張って育児に奮闘し続ける――。気づけば、親の思い描くビジョン通りに子どもを歩ませようとしてしまっているかもしれません。そこで今回は、日本の常識に縛られることなく、グローバルに活躍してきた経験を生かして子育てをしてきた6人の女性をクローズアップ。海外で子育てする人、自身の海外経験を日本での子育てに生かす人、グローバル企業に勤めて多様性を身に付けた人の「レールを敷かない子育て」に迫ります!

グローバル基準の子育て

 国際連合、ゴールドマン・サックス証券、クレディ・スイス証券、経済協力開発機構(OECD)と誰もが知る企業や組織でキャリアを積んできた村上由美子さん。OECDでは民間出身者としては初の東京センター所長を務め、現在はゴールドマン・サックス証券元副会長のキャシー・松井さんや翻訳家の関美和さんとともに立ち上げたESG(環境・社会・企業統治)重視型のグローバル・ベンチャーキャピタル・ファンド「MPower Partners(Mパワー・パートナーズ)」のゼネラル・パートナーとして、これまで培った金融の専門知識を生かして社会課題の解決に挑んでいます。

 インタビュー中もフレンドリーな様子で受け答えしてくれた村上さんは、19歳、17歳、14歳の3人の子どもを持つ母親でもあります。19歳の長男と17歳の長女は米ニューヨークで出産。その後、第3子である次男の出産直前に東京へ転勤となったため、米国と日本の両国で子育てをしてきました。

 村上さんの子育てで特徴的なのは、日本に帰国後もアメリカンスクールに通わせていたということ。「日本の学校とアメリカンスクールのどちらを選ぶかで、正直悩んだ」と言いますが、日本と米国の教育内容を冷静に比較した上で、アメリカンスクールを選択したのだそう。そこには、OECDで数々の教育に関するデータに触れてきた村上さんならではの判断があったようです。

 また、村上さんには、子育てをする上で、一貫して大切にしてきたことがあるともいいます。それは、「子どもが何かを『面白そう』『やってみたい』と思えばサポートし、そこにはこんな世界が広がっているんだよと、先の景色も見せてあげる」ということ。そして、仮にそのことへの興味が失われてしまったら、方針転換も許容するということ。

 子どものしたいことをさせる、嫌になったらやめさせるといっても、甘やかしてきたわけではありません。村上さんがそこにこだわる背景には「現実をしっかり知った上で目指すべき道を自分で見つけてほしい」という思いがあるから。

 「関心や憧れを抱いたことが、実際に経験してみると随分違うということも珍しくありません。子どもの力だけではどうしても見えない部分もあります。だから、まずは体験させ、親のサポートによって子どもだけでは見えない部分もしっかりと視界に入れさせることが大事」なのだと村上さんは強調します。

 現在、長男は自分の進みたい道を自分で見つけて、親元を離れ、米国の大学に進学しています。実際に、村上さんは子どもにどんなサポートをし、どんな景色を見せてあげてきたのでしょうか。

詳しくチェック!
・日米の教育内容を比較した上で、村上さんがアメリカンスクールを選んだ理由は
・株式をプレゼントしてきたことで子どもが身に付けたもの、村上さんが伝えたかったことは
・「親がレールを敷くことは悪くはない」が、「敷き方」が大切
・生きる力を育むために、大事にすべきことは