リスキリングでキャリアチェンジ
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DX(デジタルトランスフォーメーション)のためのリスキリングは一般的に企業主導で行うもの。ところが大渓明日香さんは独学でRPA(ロボティック・プロセス・オートメーション)を学び、昔ながらの紙ベースだった業務フローの自動化をコツコツと会社に提案し続けた。その経験がSNSを通じて転職のチャンスを呼び込み、2022年にはマイクロソフトMVP(※)を受賞した彼女は、もともとプログラミングスキルもないし「8時間睡眠は譲れない」というが、一体どうやって学んだのだろうか。詳しく話を聞いた。
編集部(以下、略) 大渓さんは前職では人事・総務の事務職をしていたそうですね。
大渓明日香(以下、大渓) はい、愛知県の製造業の工場の隣に併設された事務所、NHK朝ドラ「舞いあがれ!」に出てくるような環境です。当時は手書き、判子、電話、ファクスと、デジタル化されていない紙ベースの業務でしたので業務効率がよいとはいえない環境でした。事務職の私も自分専用のPCはなく、共用PCを使っていました。
ロボットに仕事を奪われるくらいなら、ロボットを使える人になる!
―― 業務効率を上げるためにRPAを学ぶ決意をしたのですか?
大渓 実は、業務というより30代の半ばから働き方についていろいろ悩んだ時期があって。田舎に住んでいるので、周りのママ友はパートタイム主婦がほとんどで、仕事で保護者会の役割が十分できない私は肩身が狭い。会社では子どもが熱を出して早退したり休んだりするたびに「すみません」と頭を下げる。この閉塞感の中で働き続けるのはつらいと思い始めていたんです。
そこで仕事以外に何か始めようといろいろ試したのですが、私は毎日8時間の睡眠時間を確保したいタイプなので、プライベートの時間を削ってまで何かに打ち込むのは合いませんでした。
そんなとき、小学生の息子がプログラミングの習い事を始めました。ところが私自身にプログラミングの知識がないので子どもが作ったものがいいのかどうか分からずほめることもできないという事態に直面したんです。
同じ時期に「業務のロボット化が進めば一般職はなくなる」という内容のWeb記事を読んで背筋が凍りました。そして、ロボットに仕事を奪われるくらいなら、ロボットを使える人になろうと思ったんです。
その記事で紹介されていたのが、エクセルやWebデータの入力を自動化するRPAという技術でした。
私はトヨタ式カイゼンが好きでいろいろ続けてきたのですが、それまでやってきたのは「紙を紛失しないように置き場所の箱を作る」「作業手順を見直す」といったアナログなものでした。PCへの入力やPC上で行うデータ転記の部分での業務改善をしなければこれ以上残業を減らせないとやっと分かったんです。
実はそれまで、紙で作業していたものをデジタル化することすら思いついていなかったんですよ。
―― そうなんですか! そこからどうやって勉強したのですか?