注目を集めるリスキリング。せっかく学んだスキルをキャリアアップ、キャリアチェンジにつなげたいですよね。DXを目的にしたデジタルスキルに限らず、さまざまな資格をミドル世代で取得して、第2の人生につなげている人たちもいます。それまでに培ったキャリアや社会人経験があるからこそ学びで得られる内容も深く、セカンドキャリアが花開いているようです。そんな人たちのリスキリング体験を取材しました。

リスキリングでキャリアチェンジ

 金沢の伝統工芸である金箔作りの現場に伝わる知恵から生まれたスキンケアブランド「まかないこすめ」。生みの親である立川真由美さんは、約20年手掛けてきた事業と会社を次世代につなげるために手放し、自身は50代で次のステージへの一歩を踏み出しました。そんな立川さんがリスキリングの場に選んだのは英国ロンドン。ビジネスの現場で多くのことを経験してきた今のタイミングならではの、立川さん流の「超実践的」な学びのスタイルとは?

立川真由美 まかないこすめ創業者、ブランドアドバイザリーWAJOY代表
立川真由美 まかないこすめ創業者、ブランドアドバイザリーWAJOY代表
金沢市出身。1899年(明治32年)創業の老舗金箔屋に生まれ育つ。1999年12月ディーフィットを設立し、家業の現場で培われてきた美肌の知恵から生まれたスキンケアブランド「まかないこすめ」を展開。2018年に会社と事業を売却し、21年6月から英国ロンドンに移住。セカンドキャリアで新たなプロジェクトを立ち上げるべく、精力的に活動している

ロンドン行きの目的はいわゆる「留学」にあらず

編集部(以下、略) 立川さんは2021年6月から英国ロンドンで暮らしているそうですね。ロンドン行きの目的は留学でしょうか?

立川真由美さん(以下、立川) 留学というと学校に通うイメージがありますけど、私はいわゆるアカデミックな学びにはあまり興味がないんです。私がロンドンで暮らそうと思った最大の目的は、グローバルにコミュニケーションが取れるようになって、ネットワークを広げることにあります。

 まかないこすめを展開していたときに海外との取引がありましたが、英語で直接コミュニケーションを取ることがうまくできませんでした。会社を売却し、これから新しい何かを見つけるために今自分に必要なのは「英語力」と「ネットワーキング」だと考えて、あらゆる国の人たちが集まってくるロンドンで暮らそうと決めました。

 語学学校にもこれまで通いましたが、私がより重きを置いているのは、コスモポリタンな都市で実際に生活し、ここに息づく考え方や価値観を吸収することです。そして、私が興味を持ったことを実社会やビジネスの場で実践している人たちとつながり、彼らから学ぶ。そういう学びのほうが私には合っています。まあ、アカデミックな勉強がそんなに好きじゃないというのもありますが(笑)。

 もうすぐこちらへ来て2年になりますが、語学のスキルはそれほど上達していないと思います。ただ、お友達の数はかなり増えていて、言葉でなくても人との関係性を深め合えることが分かってきた感じです。英語力よりもその能力ばかりが発達していますね。次にやりたいことも見えてきて、新しいプロジェクトを立ち上げるに当たっての協力者も増えつつあります。

―― 立川さんは18年、49歳のときに、まかないこすめを展開する会社を東証1部(現・東証プライム)上場の美容・健康機器メーカーに売却しました。非常に大きな決断だったと思いますが、何かきっかけがあったのでしょうか。