団塊ジュニアたちもアラフィフに入り、就業率の高い「更年期世代」(45~54歳)の働く女性は748万人(労働力調査・2021年)で、働く女性の約4分の1を占めています。慢性的な労働力不足の今、更年期女性が働きやすい環境をつくることは、働く女性の側だけの問題ではなく、働いてもらう企業側にとっても重要な課題です。「更年期×働く」の現在を両面から追います。

働く私の更年期

 30代半ばから突然起こった体の不調の影響で、仕事の契約打ち切りや離婚などを経験した酒ジャーナリストの葉石かおりさん(56歳)。40代で「更年期障害」と診断を受け、以降約15年間婦人科へ定期的に通いながら体の変化と向き合い続けています。更年期不調に悩んだ自身の経験から、産婦人科医監修の下『死んでも女性ホルモン減らさない!』(KADOKAWA)を執筆。48歳で再婚、50代で18万部を超えるベストセラー本を出版し「今が一番幸せ」と語る葉石さんに、更年期不調に悩んだ経験、仕事や日常生活への影響を最小限に抑える工夫、60代に近づく今も進行中の体の変化について詳しく聞きました。

葉石かおり エッセイスト、酒ジャーナリスト
葉石かおり エッセイスト、酒ジャーナリスト
大学卒業後、ラジオリポーター、女性週刊誌の記者を経て現職に。2015年、柴田屋ホールディングスとともに一般社団法人ジャパン・サケ・アソシエーションを設立する。「酒と健康」「酒と食のペアリング」を核にメディアやセミナーなどで活躍。22年京都橘大学健康科学部心理学科(通信制)入学。代表作にシリーズ累計18万部を超える『酒好き医師が教える最高の飲み方』『名医が教える飲酒の科学』(ともに日経BP)がある。認定フェムテック・エキスパート

30代半ばから、ホットフラッシュと激しい感情の起伏に悩んだ

編集部(以下、略) 葉石さんは、女性ホルモンの影響による体の不調に悩んだそうですね。いつ頃、どのような症状があったのでしょう。

葉石かおりさん(以下、葉石) 私の場合は、35歳の頃から突然体の変化が起こりました。特にひどかったのはホットフラッシュです。出版社に勤めていた当時、ワイン界の大御所へのインタビュー取材中に顔から上だけがカーッと熱くなって。真冬で暑くもないのに顔から大量の汗が流れ落ち、取材相手が心配してティッシュを持ってきてくれるくらいの状態でした。「また汗が止まらなくなったらどうしよう」と自信を失い、その日以降大事な場面になるほどメンタル面で追い込まれるようになりました。

 同時期に感情の起伏も激しくなって、ささいなことでイライラしてしまう。家でも会社でも怒りや悲しみの感情を抑えることができず、体の中にコントロール不能な猛獣を飼っているような不安に襲われました。ある日上司からの指摘に対して「納得がいかない」と腹が立って、編集部のみんながいる前で大げんかをしてしまったんです。フリーランスの立場でしたが、10年以上毎月定期的にあった仕事が、翌週からいっさい仕事を回されなくなり、「ああ、クビになったんだな」と思いました。

―― 葉石さんが婦人科で「更年期障害」と診断されたのは42歳の頃。原因が特定できるまでの不安は、相当大きかったのではないでしょうか?

葉石 15~20年前は更年期という言葉が今よりも知られておらず、私自身も「更年期=母親世代がなるもの」というイメージしか持っていなかったこともあり、女性ホルモンの影響だとは思い当たりませんでした。強烈な怒りの感情が湧き起こる一方で、電車に乗っていると急に涙が出てくることもあったので、最初は双極性障害やうつ病を疑ったんです。ストレスが原因なのではないかとメンタルクリニックにも通いましたが、処方された薬を飲んでも眠くなるだけで、症状は改善しませんでした。

―― 出版社を辞めた後、体の不調とはどのように折り合いをつけて過ごしましたか?