働く私の更年期
当事者から「余計なことを言わないで」と怒られた
以前は女性が長くキャリアを築く事例は少なかったため、更年期とともに働くことの課題に目が向けられてこなかった。しかし、出生数が年間200万人だった「団塊ジュニア」世代が続々と更年期に突入し、その課題は顕在化し始めている。特にこの世代には管理職やリーダーなどの責任のある役割を任されている人も多く、更年期を理由に離職が増えると経済的損失が大きいと社会が認識するようになったのだ。
NHKと労働政策研究・研修機構などが2021年に行った調査「更年期と仕事に関する調査2021」によると、40~59歳の女性4296人のうち、更年期症状が原因で「仕事を辞めた」女性は9.4%に上った。理由としては「仕事を続ける自信がなくなった」「症状が重かった・働ける体調ではなかった」「職場や会社に迷惑がかかると思った」「職場に居づらくなった」などが挙げられている。
更年期の女性に働くことを諦めさせないために、企業に必要な変化や対策は何か。更年期世代のサポートを目的に活動し、現状に詳しい2人に話を聞いた。
「2022年2月に、岸田政権が女性の更年期障害が日常生活に与える影響についての調査研究を実施することを明言し、厚生労働省が初めて実態調査を行ってから、空気感がガラリと変わった」と話すのは、更年期世代のサポートを目的に企業や自治体で研修やセミナーを行うNPO法人ちぇぶらの代表理事 永田京子さん。
「16年のちぇぶら発足当時は、企業に提案に行っても担当の男性社員たちからは『ああ、あのヒステリックな女性たちのことね』という反応をされることもあり、更年期に対する大きな偏見が壁になって、なかなか次に進むことができませんでした。さらに当事者の人たちからも、更年期の話題を出すだけで『余計なことを言わないで』と怒られてしまうような状況でした」
ちぇぶらが発足した16年は、女性活躍推進法が施行された年だ。
「当時は企業からの直接の依頼は少なかったですが、有志で女性社員たちが集まり、カンパを募って私たちを研修に呼んでくれたところもありました。そこで実績をつくり、会社にアピールして道を開いていってくれた女性たちがいたんです。そういった努力が実を結んだというのもあるのでしょう。年々依頼数は増えていっている状況です」