中学受験をする子どもは年を追って増えています。その一方で、様々な理由から中学受験を見送る親子もいます。高学年時代はのんびりさせたい、習い事やスポーツに時間を費やしたい、うちの子には高校受験の方が向いていそう、1度はトライしたけれど撤退したなどなど。よく考えた結果ではあるけれど、塾通いの子を見ると「やはり中学受験をさせたほうがいいのでは」と気持ちがぐらつくこともあるかもしれません。高学年時代をどう過ごさせたらいいか分からず、結局、何もせずに過ぎてしまうかもと、不安を感じている人もいるでしょう。そこで本特集では、わが子に中学受験をさせないという覚悟を決めた親に、その理由やわが子の進路設計を聞いていきます。「しない」と決めた方だけでなく、中学受験をするかしないか迷っている方もぜひ参考になさってください。

中学受験「しない」親子の覚悟 過ごし方&進路設計は?

中高一貫校から海外大学へ、が親の考えたルートだった

 中学受験に向けて進む中、子どもから「中学受験したくない」という言葉を聞いたり、子どもの態度からそのメッセージを感じたりして、悩んだことがある親は多いのではないでしょうか。

 外資系銀行の勤務経験があり、現在は教育系ウェブメディアを運営している佐久間麗安(れな)さんもその1人。子どもの中学受験を断念した経験があります。

 佐久間さんは間もなく13歳になる長男と10歳の長女を共働きで育てています。夫婦で話し合い、長男には中高一貫校を受験させ、その後は海外大学に進ませたいと考えていました。受験準備を進めていましたが、受験本番の約1年前、「僕は受験したくない」と言われてしまいます

 暗い顔で自分の気持ちを伝えたわが子。その気持ちを考えて、佐久間さん夫婦は受験を取りやめることを決意します。直後は不安でいっぱいになったそうですが、長男の表情もすっかり明るくなり、新たな進路も見えてきた今、佐久間さんは「あのとき軌道修正できてよかった」と当時を振り返ります。

 親が考えていたレールからわが子が外れようとしたとき、どこに着目し、どう判断すべきなのでしょう。そのヒントを、佐久間さんの体験談から探っていきます。


 佐久間さんの長男は小学1年生から都内のインターナショナルスクールに通っています。ともに外資系投資銀行での勤務経験がある佐久間さん夫婦が、子どもの将来には英語力が基本になると考えたからです。3歳からプリスクールに通い、小学校に上がる段階でインターナショナルスクールを受験しました。一方、夫婦2人とも日本で受験を経験し、その教育水準の高さも実感していたことから、インター校で英語力を身に付けた後は日本の中高一貫校で学ばせたいとも考えていました。

 「経済協力開発機構(OECD)が実施する学習到達度調査(PISA)で日本が毎回高い順位をキープしていることからも分かるように、日本の教育水準は世界でトップレベルです。通っているインター校は米国系のカリキュラム。理数系の授業は日本の学校よりも簡単で、息子もインター校の授業に退屈することもあったので、算数や理科が得意なこの子の学力を伸ばすには、中高は日本の一貫校で学ぶのがよいだろうと考えていました。息子にも学力は大切だと言い続けていました」

 さらに高校卒業後は海外大学へ、というのが佐久間さん夫婦のプランだったのだそう。その理由について次のように話します。

 「夫は東京大学、私は慶応大学を卒業しているのですが、親のコピーで東大を目指しても、父親以上にはなれないでしょう。親とは違う道で頑張ることで違う伸び方をするのではないか、それなら中学と高校は日本の学校で学んでしっかり基礎学力をつけたうえで留学するのがいいのではというのが、海外大学を考えた理由です。グローバルな中での日本の経済的な状況を考えても、大学以降は日本のレールから外れて、海外でチャレンジしたり、働いたりしたほうがいいだろうということもありました」