中学受験をする子どもは年を追って増えています。その一方で、様々な理由から中学受験を見送る親子もいます。高学年時代はのんびりさせたい、習い事やスポーツに時間を費やしたい、うちの子には高校受験の方が向いていそう、1度はトライしたけれど撤退したなどなど。よく考えた結果ではあるけれど、塾通いの子を見ると「やはり中学受験をさせたほうがいいのでは」と気持ちがぐらつくこともあるかもしれません。高学年時代をどう過ごさせたらいいか分からず、結局、何もせずに過ぎてしまうかもと、不安を感じている人もいるでしょう。そこで本特集では、わが子に中学受験をさせないという覚悟を決めた親に、その理由やわが子の進路設計を聞いていきます。「しない」と決めた方だけでなく、中学受験をするかしないか迷っている方もぜひ参考になさってください。

中学受験「しない」親子の覚悟 過ごし方&進路設計は?

未来のライバルは中受組

 「中学受験をしないからといって、子どもの学力を諦めたわけではない」。多くの親がそう思っているのではないでしょうか。中高一貫校に行かなくてもしっかりと学力を身に付けて、国内外の難関大学に進んでほしいというのが親たちの本音でしょう。とはいえ、大学受験では、学校を挙げて大学受験対策に本腰を入れるところが多い中高一貫校の生徒とも競うことになります。大学受験で互角に戦える学力を付けるため、中学受験をしない家庭は、何をすればよいのでしょうか

 そこで、公立中学から鹿児島のラ・サール高校、東京大学に進学した経歴を持ち、受験や学習法に関する著書を執筆している天流仁志さんに、中学受験をしない小学生が高学年で行うべき学びについて詳しく聞きました。


 まず、中学受験をせずに小学生時代を過ごすメリットと、その時期に取り組むべき学びについて天流さんは次のように話します。

 「中学受験生の多くは、塾の精密なカリキュラムに合わせて勉強を進めていきます。小テスト、模試、講習もスケジュールに組まれています。このようなレールに乗らない『非受験組』は子どものペースや興味に合わせた勉強や読書、体験をさせる余裕があります。このメリットを利用して、高校・大学受験を念頭に置いた勉強を進めていくとよいでしょう」

 例えば、社会の地理に興味はあるけれど、理科がさっぱりという子には、国語、算数、理科、社会の4教科が主流である中学受験に取り組むのは難しいかもしれません。しかし、高校受験ならまだ時間があるので、先に地理を得意分野にして、自信を付けさせる方法が取れます。また、天流さんによると、小学校時代から算数の勉強に熱中していた子が、公立中学入学後に数学を前倒しして学ぶ東進ハイスクールの講座を利用し、中3までに高校の範囲を終わらせてしまった例もあるそうです。

 「好きな科目から勉強できることで学習へのモチベーションが上がり、自発的に勉強に向かいやすくなります。これも中学受験をしないメリットの1つと言えるでしょう」

 ここからは、大学受験を見据えている家庭が、各教科ごとに小学校時代に取り組んでおきたい学びについて、具体的に聞いていきます。それぞれの教科における、天流さんがおすすめする教材コンテンツや講座、テストなどについても紹介してもらいます。

【小学校でやっておきたいこと】

国語/読解力、表現力を身に付ける
算数/自分で図や表を書いて考える解き方を身に付ける
社会・理科/論理的に考え、ものの理屈を文章で説明できるようにする
英語/リスニング力を高める。発音、リズム、「後置修飾」に慣れる