いろいろな「値上げ」が止まらない2023年。家計の負担は年間4万円の増加(22年度比)と試算されています。一方でキャッシュレスが浸透し、企業のポイント発行額の規模は1兆円を突破、今や疑似通貨としての性格を強めて見逃せません。そこで、家計簿アプリや各種ポイントの活用などで変わる家計管理の「シン常識」をまとめてご紹介。気になるFIREの準備にも家計管理は必須です。

家計の見直し&FIREのシン・常識

 FIREとは経済的自立「Financial Independence」と早期リタイア「Retire Early」の頭文字を組み合わせた造語。資産を一定以上ためて運用し、その運用収入で生活することで、経済的な自由を手に入れて、早期リタイアを目指す米国発のムーブメントで、もっと自分本位に、自由に生きたいという人たちに注目されています。憧れはするものの、果たしてどのくらいの資産があればいいのか。また、そのメリット・デメリットは? FIREに関する疑問を経済ジャーナリストの頼藤太希さんに聞きました。

頼藤太希 Money&You代表取締役
よりふじ・だいき/中央大学商学部客員講師。早稲田大学オープンカレッジ講師。慶應義塾大学経済学部卒業後、外資系生命保険会社にて資産運用リスク管理業務に従事。2015年にMoney&Youを創業し、現職へ。女性向けWebメディア『FP Cafe』『Mocha』やYouTube「Money&YouTV」を運営。『11歳から親子で考えるお金の教科書』(日経BP)など著書累計100万部超。日本証券アナリスト協会検定会員。宅地建物取引士。ファイナンシャルプランナー(AFP)。日本アクチュアリー会研究会員

「4%ルール」で経済的自立と自由を手に入れる

編集部(以下、略) これまでも早期リタイアして悠々自適な暮らしをする人はいたと思うのですが、FIREとはどこが違うのですか?

頼藤太希さん(以下、頼藤) 異なるのは、億万長者でなくても、貯蓄を取り崩さなくても、資産運用から得られる収入の範囲で生活をまかなえれば仕事に縛られない自由な生き方ができるとしたことにあります。

 考え方のもとになっているのが「4%ルール」です。「(年間の)生活費を投資元本の4%以内に抑えられれば、資産が目減りすることなく暮らしていける」というルールで、米トリニティ大学の論文が根拠になっています。

 例えば、年間の生活費が300万円の家庭なら、

 300万円÷4%=7500万円

 7500万円の資産を作り年4%で運用すれば、理論上は資産を維持したままずっと暮らしていける。生活費350万円の家庭なら350万円÷4%=8750万円の資産、という計算になります。

「4%ルール」をもとに考えると、年間生活費の25倍の資産があれば、理論上は何歳からでもFIREできる
「4%ルール」をもとに考えると、年間生活費の25倍の資産があれば、理論上は何歳からでもFIREできる

―― いずれも簡単に作れる額ではありませんが、実現するとしたらどんな方法がありますか?

頼藤 人によって目指すゴールは違うと思います。FIREといっても、大きく分けて2つのスタイルがあります。

ケーススタディー1
●40歳会社員Aさん。55歳で会社を辞めて英会話教室を始めたい
辞めてからの収入は月10万円程度の見込み

→Aさんの場合、必要な資産はいくら?

ケーススタディー2
●会社員50歳Bさん、手持ち資金が2000万円ある
60歳で定年延長せずに辞めたい

→Bさんの場合、必要な資産はいくら?

※FIREをするにはいくら必要? 詳しくは、4ページ目で試算結果を紹介します。