いろいろな「値上げ」が止まらない2023年。家計の負担は年間4万円の増加(22年度比)と試算されています。一方でキャッシュレスが浸透し、企業のポイント発行額の規模は1兆円を突破、今や疑似通貨としての性格を強めて見逃せません。そこで、家計簿アプリや各種ポイントの活用などで変わる家計管理の「シン常識」をまとめてご紹介。気になるFIREの準備にも家計管理は必須です。

家計の見直し&FIREのシン・常識

 老後資金2000万円問題もこの物価上昇でさらに見通せなくなり、不安になりがち。でも答えは意外とシンプルなのかも。あるもので暮らせばいい。なんと年金月額5万円で賄う節約生活を送る72歳のブロガー、紫苑さんの暮らしぶりは、大変というよりむしろおしゃれで楽しそうで、ついまねしたくなる。紫苑さんの自宅を訪ねて、工夫の数々と楽しむコツを紹介してもらった。

ブロガーの紫苑さん(72歳)
ブロガーの紫苑さん(72歳)

編集部(以下、略) 紫苑さんがブログで「節約は知的な行為だ」と書いていたのが印象的でした。

紫苑さん(以下、紫苑) 実は私、以前は生活とちゃんと向き合っていなかったというか、食事も適当、家事も誰かにやってもらえるならやらなくてもいいことだと考えていたように思います。当然お金のことも。

 でも、この生活を始めてから、頭を使うようになりました。そして、考えることが楽しくなりました。月5万円で生活って信じられないでしょ。私もとても無理と思っていました。

 20万円くらい使っていたものを5万円にするのですからチマチマ節約していては間に合わない。発想の転換が必要です。夜寝る前に「明日どうしよう」と真剣に考えると、朝になってアイデアが浮かんでくることがあるんです。それが楽しくて。

一番いらなかったものは他人への見え

―― 紫苑さんが現在のライフスタイルにシフトしたのはどのような経緯からですか?

紫苑 フリーランスのライターの仕事をして、シングルマザーとして2人の子どもを育て、子どもの独立後は古い公団住宅に引っ越しました。その家賃も負担に感じて、64歳のときに貯金をはたいて中古住宅を買いました。家賃や管理費など固定費は下がりましたが、貯金もなくなりました。

 フリーランスで国民年金しか払っていなかったので年金受給額は月に5万円です。年金と仕事の収入で細々と暮らしていましたが、新型コロナウイルス禍の中で収入が激減したんです。69歳という年齢もあって、それ以前から少しずつ仕事は減っていましたが、外出もままならない中で5万円でやっていかなければという現実に目覚めました。

 まずは、なくてもいいものは何か書き出したんです。そうしたら、「お金がないと困る」と思っていたことも、本当は大して困らないことに気づきました

 一番いらないのは他人に対する見えでした。食生活もストレスからお菓子をよく食べていて、それらを一つ一つ検証していったら、なくてもいいもののほうが多かった。

 洋服代、お菓子代、美容代もいらない、本は図書館で借りるようにして……と削っていったら、食費と光熱費と税金だけが残りました。計算すると外出して人と会ったりする交友費を入れて月に4万円、なんと1万円残ったんです。

 そして「欲しいものを買えない」から「買わない」と自分の意志に気持ちを切り替えました。街で見たすてきなものも、ここは美術館だと思うことに。美術館ではどんなにすてきでも買えませんよね。そのすてきさを目で堪能することで豊かな気分になれるようにしました。