中学受験に向け、受験生としてがんばる6年生、勉強の中身が本格化する5年生、そして塾通いをスタートさせた4年生と、状況は異なるものの、学年を越え共通する心配ごとの一つが、わが子の「成績の低迷」です。低迷が長引くと、連動して子どもの「やる気」も低下してしまうケースが散見されます。一喜一憂すべきでないと分かっていても、いつ成績が浮上するか分からず、出口が見えない現状には、親側の不安が募るばかりではないでしょうか。成績とやる気が急降下、あるいは踊り場の状態からどのようにすれば脱することができ、最後に合格をつかめるのか。本特集では、そのための正しい原因と対策を探っていきます。

中学受験 途中まで成績低迷でも最後に合格つかむ親子の共通点

 わが子の未来に有益な教育を求めて、首都圏を中心に過熱が続く中学受験。2023年首都圏中学入試は、受験者数、受験率ともに過去最高を記録しました。

 小4から通塾をスタートさせ、今年2月に本番を迎えた受験生は、新型コロナウイルス下の3年間を受験勉強とともに過ごしました。さまざまな制約の中、高倍率を勝ち抜いた親子は、どのように受験期間を過ごしてきたのでしょうか。

 今回は、受験直前まで成績もやる気もいま一つ、「自己肯定感が下がりまくっている」と塾の先生に指摘されるほどの低迷期を経て、最後に合格を勝ち取った母・澄子さんと息子のモモタくん(共に仮名)親子の「巻き返し受験勉強ルポ」。なかなか上昇気流に乗らないわが子とどう向き合い、どのようにして壁を乗り越えてきたのかを聞きました。

公立校を回避するため、中受を決意

 モモタくん一家が中学受験の道を選んだのは、モモタくんが3年生に上がったとき。学年全体に落ち着きがなく、小学校のクラスが荒れ気味だったため、もともと地元の公立中学への進学にためらいがあったと言います。

 「モモタ自身がにぎやかな性格で、ともすれば問題を起こしがちな子たちに引っ張られそうになることも、親にとっては不安材料の一つでした。また、モモタの父親も私も地方の公立高校出身で、国立大に進学しろという先生からのプレッシャーに苦しんだ経験があり、モモタには大学付属校に入って、受験に左右されない勉強をしてほしいという思いもありました」

 3年生になって学童に入れないと分かり、バスケや将棋、スイミングなど日替わりで学童代わりに習い事を組み込んだという澄子さん。その中の1つとして、4月から週に1回、近所のサピックスに通い始めました。

 「本人は体を動かすことが大好きで、勉強は得意でも嫌いでもないタイプ。中学受験をモモタ自身がリアルに捉えられてはいなかったと思いますが、放課後の過ごし方の一つとして抵抗なく塾通いを始めることができました。途中から仲良しの子が通い始めてからは、遊びに行く感覚だったのではないでしょうか。小規模校で3年生は2クラスだったこともあり、クラスが上下しても気に留めることなく通塾していました」

 ところが4年生になると、一気に人数が増えて7クラスに。モモタくんは真ん中のクラスになりました。

 「そこからしばらくは真ん中のクラスを維持していましたが、5年生になると急に勉強が難しくなり、クラス落ちに連動するかのように『塾への行き渋り』が始まりました。クラス昇降を伴うテストの翌日には、学校で『テスト簡単だったよな~』と自慢する子たちを前に気落ちするようになったことから、私は転塾を視野に他塾のリサーチを始めました」

 夏期講習直前のテストでクラスが下から2番目に下がったとき、「もう塾へは行きたくない」と打ち明けたモモタくん。その言葉を聞いて、澄子さんはモモタくんに転塾してみないかと話を切り出します。

 「振り返ると、この5年生の夏前が最初の成績低迷期でした」

この記事で分かる「成績低迷」脱出のヒント

・最初の低迷期は5年生夏前→下位クラスに転落し転塾を決意
・6年生夏前に再びやる気ダウン→子どもへの向き合い方を軌道修正
・2度の塾への行き渋り、原因は○○の低迷と母の○○○○思考
・夫婦の話し合いがターニングポイントに
・受験が「自分ごと」になったきっかけは