社会が大きく変化し価値観が多様化する今、私たち40~50代に必要なのは、過去の経験や固定観念にとらわれがちな思考をアップデートしていくこと。教えを請う相手は「人生の先輩」だけではありません。サステナビリティーや社会課題への関心が高く、自分軸で生きることを大切にする若手世代はどのような意識で仕事と向き合い、行動しているのか。Z世代と呼ばれる若手リーダーたちの「頭の中」に迫ります。

Z世代リーダーの頭の中&仕事術

 2021年のショパン国際ピアノコンクールで51年ぶりに日本人最高位の第2位に輝いた反田恭平さん(28歳)。卓越したピアニストであると同時に、自ら株式会社を設立してオーケストラを運営、指揮者やプロデューサーとしても活動するなど、規格外の活躍ぶりはクラシック音楽ファンの枠を超えて大きな注目を集め続けています。そんな反田さんが現在のような活動のスタイルを志向した理由や、リスクを取ってもショパンコンクールに挑む決断を後押しした思いとは?

反田恭平 ピアニスト、指揮者
反田恭平 ピアニスト、指揮者
そりた・きょうへい/1994年生まれ。2012年、高校在学中に第81回日本音楽コンクール第1位入賞。16年にサントリーホール完売のセンセーショナルなリサイタル・デビューを飾って以降、毎年定期的にリサイタルや国内外のオーケストラとのツアーを全国で行っている。18年からは室内楽や自身が創設したジャパン・ナショナル・オーケストラのプロデュースも行い、21年5月にはオーケストラのための新会社を設立。21年、第18回ショパン国際ピアノコンクールで約半世紀ぶりに日本人最高位の第2位を受賞した

横浜みなとみらいホール25周年の「25公演」を企画中

編集部(以下、略) 反田さんは2023年4月から2年間、横浜みなとみらいホールのプロデューサーを務めるそうですね。ピアニストとしての活動に加えて、「若手アーティストが持続的に活動できる場を」と自ら設立したジャパン・ナショナル・オーケストラ(JNO)の運営もあるのに、驚きです。

反田恭平さん(以下、反田) ホールには優秀なスタッフの方がたくさんいらっしゃるので、やりたいことのアイデアと方向性を示したら、あとは皆さんが具体的な作戦を立ててくれます。僕は責任者として内容を確認し、判断していく感じなので、そんなに大変ではないです。

 学生の頃から、イベントを企画し、人材を集めて発表したりすることが好きでした。今も普段から、電車の中づり広告を眺めては「この会社に企画を通すとしたらどんな提案がいいだろう」とか、「ここにある机が3万円だとして、5万円で売るにはどうしたらいいだろう」とか、そんなことばかり考えています(笑)。

 今回はホールが開館25周年を迎えるということで、「25」にちなんだフェスティバルをやりたいと思っています。期間は2024年の3月20日~24日。5日間で25公演を行おうと、まさに今、絶賛企画中です。

 一つこだわりたいのは、コンサートの開演時間。夕方5時や6時まで仕事をしている会社員の方たちがちょっとご飯を食べてから行けるよう、夜の公演は通常より遅めの8時からにしたいと思っています。海外だと夜8時や9時開演って当たり前にあるんですよ。

 生まれたての赤ちゃんから、クラシック音楽好きでこのホールのファンだという方まで、幅広い層に向けていろんなことができたらいいなと思っています。

―― 多くのクラシックアーティストの方々は、事務所に所属してマネジメントをしてもらいながら演奏活動をしていますが、反田さんは20代半ばで個人事務所をつくり、オーケストラをプロデュースしたりレーベルを立ち上げたりと、前例のない活動を展開してきました。「ピアニストに専念したほうがいいんじゃない?」などと言う大人、いませんでしたか?

反田 もちろんいましたけど……直接言ってくる人はあまりいなかったですね。僕には、自分の中で、自分がどうあるべきか、なぜこうしたいかということが明確にありますから。自分がすべきことを一つずつ実践しているという感じです。

 自分の価値は自分でしか決められない。誰かが決めるものではない。そう思っています。自分を信じているからこそ、誰が演奏しても同じになるのではなく、そこに、自分自身の音楽があるということをお客様に理解いただけているのではないかと思っています。