安定感、知名度、収入面――。大企業に勤めることには特有の魅力やメリットがありますが、大組織ならではの動きの鈍さや閉塞感に悩まされがちなのもまた事実。「この仕事、やってて本当に面白いの?」と聞かれたら「もちろん」と即答できますか? 本当にやりたいことを求めてミドル世代で大企業を辞めた人に、なぜ辞めたのか、後悔はないか、辞める前にすべきことはあるかなど、本音を語ってもらいました。

私たち、大企業を辞めました ~準備したこと、すべきだったこと~

大企業のメリットとデメリットは表裏一体

 外資系企業数社でキャリアを積んだ後、日本マイクロソフト(以下、MS)、豊島区役所の任期付き公務員を経て、45歳のときに立ち上げた自身の会社Terrace PR & Communications合同会社で活動する宮田麻子さん(53歳)。コミュニケーション・ストラテジスト(PR、広報)として企業や社団法人などのPR戦略の立案などをサポートする他、2023年から信州大学グリーン社会協創機構 特任准教授に就任。現在、長野と東京の2拠点で活動しています。

 宮田さんは、MS時代や豊島区役所での勤務経験を振り返り、「大企業や役所など、しっかりした大きな組織で働くメリットとデメリットは表裏一体だと思う」と話します。

 「私は日本で大学を卒業した後に、米国の大学に進み、現地で就職。その会社の転勤で日本に戻り、以降、数回転職して34歳のときに4社目となるMSに入社しました。職種はずっとPRや広報、マーケティングです。MSを退職してから8年余り経過しているため、在職当時の記憶になりますが、MSは多国籍ですごくフラットな組織でした。国籍や性別、年齢などでバイアスをかけられることは一切なく、とても居心地が良かった」

 「会社に不満はなかったし、とても恵まれた環境だった」と話す宮田さんがMSを退職する決意をしたのは入社11年目を迎えた45歳のとき。自分の本当にやりたいことが見えてきたこと、より自由に働きたいと思うようになったことが理由でした。