安定感、知名度、収入面――。大企業に勤めることには特有の魅力やメリットがありますが、大組織ならではの動きの鈍さや閉塞感に悩まされがちなのもまた事実。「この仕事、やってて本当に面白いの?」と聞かれたら「もちろん」と即答できますか? 本当にやりたいことを求めてミドル世代で大企業を辞めた人に、なぜ辞めたのか、後悔はないか、辞める前にすべきことはあるかなど、本音を語ってもらいました。

私たち、大企業を辞めました ~準備したこと、すべきだったこと~

若い世代に「働くって、楽しい!」を伝えたい

 2016年にユニリーバ・ジャパンで、自分らしく働き、生産性を高められるよう、働く時間・場所を社員が自由に選べる人事施策「WAA」(Work from Anywhere and Anytime)を導入したのは、当時取締役人事総務部長だった島田由香さん。今ほどリモートワークが普及していない頃に打ち出したこの施策は、業界内外で注目を浴びました。

 その後も、履歴書から顔写真をなくす採用方法をとるなど、一歩先を行く施策で日本企業の人事分野をリードしてきましたが、突如22年6月に同社を退職。やりがいのある仕事や大企業の重要なポストを手放す決断をしたのは、なぜだったのでしょうか。独立した今思うこと、そしてこれから目指す未来について話を聞きました。

編集部(以下、略) 島田さんがユニリーバを辞めたという話を聞いた時は、驚きました。周りの方もびっくりしたのではないでしょうか?

島田由香さん(以下、島田) そうですね。でも、ポジティブな理由なので、説明するとみんなすぐ納得してくれました。私にとってユニリーバは、今でもとても大切で大好きな会社です。でも、やりたいことがそれにまさってしまったんですよね。

島田由香
島田由香
しまだ・ゆか/1973年、東京都生まれ。慶應義塾大学卒業後、パソナに入社。人材関連事業に携わった後、米コロンビア大学大学院へ。組織心理学修士取得後、2002年日本GEに入社し、08年にユニリーバ・ジャパンへ。人事部門でマネージャーやディレクターを経て、取締役人事総務本部長を務める。17年にYeeYを共同創業。22年6月にユニリーバ・ジャパンを退職し、独立

―― やりたいこととは?

島田 大きく分けると4つの項目に分かれます。1つ目が、日本の働き方を改善したいということ。これは、ユニリーバ時代から信念として持ち続けてきたものですが、若い世代に働くということを、もっとポジティブなものとして伝えていきたいと思っています。働き方はもっと改善できると思っています。いまだ通勤時の満員電車が存在していたり、台風や地震が起きてもオフィスに来た人が英雄みたいに語られたりしますよね。でも、正直その時間とエネルギーって、無駄じゃないですか。それを仕事やもっと大切なことに回すべきだと思うんですよね。