米ボストン・コンサルティング・グループの日本代表を約4年務め、「世界で最も有力なコンサルタントのトップ25人」に選出されたこともある、経営学者の内田和成さん。『ビジネススクール意思決定入門』(日経BP)では一流の経営コンサルタントの視点も交えて、リーダー層が備えておきたいビジネス理論や思考法をまとめています。組織での職位が上がるにつれて求められる高度な意思決定。意思決定における「合理性」と「感情」のバランスについて解説した前回に続き、最終回では、最終意思決定者である上司に、自分の提案を通りやすくするためのポイントを紹介します。
(1)リーダーに必要な経済性分析 「最大利益」どう見極める
(2)満場一致の意思決定は質を疑え 経験を重ねて精度上げる
(3)上司に提案が通らない人は、まずは相手の「性格」を探る ←今回はココ
「提案を通したい相手が誰なのか?」をまず見極める
普段はリーダーとして意思決定を行う皆さんも、プレゼンや商談の場などで、経営層やクライアントに提案をする立場になることがあると思います。今回は、組織の中で、自分の意見や提案を通りやすくするために必要なポイントをお伝えします。
まず、前提として押さえておくべきことは、「提案を通したい相手が誰なのか」をしっかりと見極めることです。孫子の兵法の「謀攻(ぼうこう)編」に、「彼を知り己を知れば百戦殆(あやう)からず」という有名な格言があります。
戦いにおいては、まず対戦相手の状況を知り、自分の攻防の状況も知った上で戦えば、百戦しても負けることはないという意味ですが、これはビジネスの世界においても同様です。
相手はどういうポジションにいる人で、何を目的にしているのか。どのような思考や行動のパターンを持っているか。それぞれの立場や置かれた環境の違いによって、興味や関心は異なりますし、ニーズも違ってくるはずです。こちらが提案する内容に対し、相手がどれくらいの知識レベルや経験があるかによっても、有効なアプローチは変わってくるでしょう。