子どもの「自走力」が育つ家庭の習慣
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1本当に必要な自走力と親が求める自走力の違いは
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2親野智可等 親がやってあげても自走力は育つ
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3ビリギャル小林さやか 子の自走に唯一必要なものは
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4自走する子どもの親は、勉強にどっぷり関与しない
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5低学年のおうちモンテッソーリで自分から宿題をする子に←今回はココ
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6当事者意識を育むコンサルママのオーナーシップ子育て
モンテッソーリ教育で育つ精神力は自走力の土台になる
「小学生の頃から親に勉強しろと言われたことはなかった」。これは偏差値上位校の中高生や大学生への取材でよく聞く言葉です。多くの場合、「けれど、勉強はしていた」と後に続きます。これぞ、世の親たちが求める、子どもが学びに向かって自走する姿でしょう。いったいどうしたら、子どもはガミガミ言われなくても勉強しようと思うようになるのでしょうか。「子どもの自走力が育つ家庭の習慣」特集の第5回は、そのヒントをモンテッソーリ教育に探しました。
「モンテッソーリ教育」といえば、藤井聡太棋士が幼児期に受けた教育として知られています。その特徴は、子どもに備わっている「自己教育力」を前提にしていること。環境が整っていれば子どもは自分の力で自分を成長させていくという考えの下に教育活動を行っています。
モンテッソーリ教育のもう一つの特徴が、子どもが主体的に活動を選ぶということです。日本モンテッソーリ教育綜合研究所附属『子どもの家』副園長の櫻井美砂さんは、同園での活動を次のように説明します。
「活動内容を大人が勝手に決めることはありません。子どもにこんな活動もあるよ、と紹介はしますが、するかしないかを決めるのは子ども自身です」
モンテッソーリ教育で重視されているのが、この「自己選択」です。取り組みたいことを自分で決めるからこそ、集中力や意欲、自制心といった精神面を育てることができるのだと櫻井さんは話します。
「モンテッソーリ教育で『お仕事』と呼んでいる活動には、始めと終わりがあります。子どもは、自分の興味のある活動を選んで始めたら、最後まで取り組みます。例えば、2歳位の子どもが好んで行う『注ぐ』お仕事。これは、ピッチャーに入っている色水を、別のピッチャーに入れ替えるといった動きの獲得や調整を促す活動ですが、この活動を好きなだけ繰り返し取り組んで満足したら、自分で元にあった場所に用具を片付けます。
年齢が上がるほど、子ども達が取り組む活動内容は複雑になり、理解力や集中力、持続力を必要とするようになります。例えば、機織り機で布を織ったり、算数教具を使って四則計算をしたりするなど、数日から数週間、数カ月かかる活動も多々あります。作業の途中で気持ちが盛り下がってしまうこともありますが、そうした時は一旦その活動はお休みにして、別の活動に取り組みます。そして、しばらくしてからまた自分のペースで活動を再開し、やり遂げます。子ども自身で選択した活動だからこそ、最後までやり遂げるように促すことができるのです。その土台として、小さい頃から発達段階に見合った活動を『自分で選び、自分のペースでやり遂げる』経験を積み重ねているということがあります。
一つ一つの活動を通して『できた』という達成感が重なると、それが自分への自信や次への意欲につながります。より難しいお仕事に挑戦する中で、集中力や持続力、自制心も身に付きます。その精神力がやりたいことを見つけて主体的に行動する力の土台になっていくのではないかと考えています」
ここで冒頭の「学習を自走する子を育てるには」というテーマに立ち戻ってみましょう。「学習を自走する」という行為を分解すると「何をいつ、どこで、どのくらいするか。うまくいかなかったらどう改善するか」といった要素になります。それは思考と判断の繰り返しで、自分で決めることには責任が伴います。暗記や繰り返し練習などの学習では自制心も必要でしょう。どうやらモンテッソーリ教育で培われる精神面は、学習の自走の土台にもなると言えそうです。
・興味のあることを主体的に選ばせる。
・「できた」という達成感を経験し、次への意欲が育つ。
・最後までやり遂げることで達成感、集中力、持続力、自制心を養う。
では、幼児期にモンテッソーリ教育を受けていない子どもが、小学生になってから学習の自走に必要な精神力を育むにはどうしたらよいのでしょうか。櫻井さんは「ハードルを高くし過ぎず、子どもの興味・関心からスタートすることです」とアドバイスします。詳しく聞いていきましょう。
