親が何度も言わなくても、自分で時間割を確認して学校の準備をする。テストが戻ってきたら、見直して間違えたところを復習するなどして、勉強のサイクルを自分で回している。そんな、「自分で考えてやることを決め、行動していける自走力」をわが子に求める親が増えています。そこには、仕事に家事に忙しい共働き家庭の事情があるとともに、社会に出たときに「自走力」こそが幸せをつかむカギになることを実感している、働く親ならではの気づきもあるようです。そこで、保育園~高学年の子どもの自走力をどのように育てていけばよいか、教育の専門家や、自走力で人生を切り開いてきた当事者、自走力を意識した子育てを実践中の働く親に聞いていきます。

子どもの「自走力」が育つ家庭の習慣

自走する子どもの親は潔く割り切っている人が多い

 勉強しなさいと言ったことがない――。自分から勉強する子の親の多くが口をそろえて言うのがこの言葉。自分もガミガミ言わずに子どもがやる気を出すまで見守ろうと思いつつも、なかなかうまくはいかないもの。「学校から帰ってきてもゲームばかりでなかなか宿題をしない」「机には向かっているけどどこか上の空」というわが子を見ていると、イライラが込み上げ、つい「宿題しなさい!」「集中しなさい!」と声を荒らげてしまう人は少なくないのではないでしょうか。

 どのような声かけや働きかけをすれば、自ら進んで勉強をするようになるのか。そもそも、わが子の「自走力」を育てるには、親はどこまで、そしてどの程度伴走すべきなのか……。子育て中の親が最も頭を悩ますのは「子どもの勉強への向き合い方」と「それに対する親の関わり方」かもしれません。

 「これまでいろいろな生徒を見てきた中で、自走する子どもの親は潔く割り切っている人が多いように感じます。何に対して割り切っているのかというと、子どもの勉強は学校や塾の先生などの『教育のプロ』に任せることです。親が、あれこれ言って強引に勉強させようとしたり、無理やり成績を上げようとしたりすることは意味がないと達観し、子どもや先生を信じて、自分は子どもの学習面にどっぷり関与しない傾向にあります。結果的にそういう家庭のほうが、子どもが自走するようになり、長期的に見ても学力が高くなるのだと思います」

 そう話すのは、自立した学習習慣を身に付けさせる方針のもと、学習塾STUDY HOUSEを運営する須合啓さんです。

 同時に「子どもが自ら勉強サイクルをつくるためには、プロに任せつつも、親がサポートしたり、手助けしたりすべきことはあります」とも言います。それは子育てと仕事の両立で手いっぱいの共働き親でも背伸びせずにできることだそう。詳しく聞いていきましょう。

この記事で読める内容
・親が勉強のスケジュールややり方を押し付けて、それを子どもが自分でできるようになることが真の自走ではない
・対話の後ろにビックリマークを付けるのは親の価値観の押し付け
・勉強のやり方を親が具体的に指示するのはNG
・親子で「学びを共有する」ことが重要な理由