親に介護が必要になったり、相続について話し合う必要が出てきたりすると、いろいろなトラブルが起きがちです。特に、きょうだいと意見が衝突すると長年にわたる骨肉の争いに発展することも。事前に知っておくべきポイントや準備しておけることを、専門家や経験者に取材しました。

相続や介護でもめたくない 親のこと、きょうだいのこと

親に「もしものとき」が来る前に

 遠く離れて暮らす親に、「もしも」のことがあったら……。今はまだ元気でも、いつ何が起こるかは分かりません。仕事と親のサポートを両立させるために、今からできることはあるのか。NPO法人「となりのかいご」代表理事の川内潤さんに話を聞きました。

川内潤(かわうち・じゅん)
川内潤(かわうち・じゅん)
1980年生まれ。老人ホーム紹介事業、外資系コンサル会社、在宅・施設介護職員を経て2008年に市民団体「となりのかいご」を設立。14年にNPO法人化、代表理事に就任。著書に『もし明日、親が倒れても仕事を辞めずにすむ方法』(ポプラ社)、共著に『親不孝介護』(日経BP)がある

編集部(以下、略) 親が今はまだ元気でも、けがをして介護が必要になったり、認知症になったり、急に亡くなってしまったり……と、「もしものとき」が来るのを不安に思う人はARIA読者に多いです。介護の現場にいる川内さんが考える「親と一緒に今からできること」とは、一体何でしょうか。

川内潤さん(以下、川内) 高齢の親だけで暮らしていて、離れた場所にいる。子どもとしては心配ですよね。私が考える「親と一緒に今からできること」は、シンプルにたった1つなんです。それは、「両親がこれからどのように過ごしていきたいと考えているのか?」を知ることです。「お父さん」「お母さん」としてではなく「1人の人間」として、どう暮らし、どう生きていきたいかを聞く。まずはそこからだと私は考えます。

親と一緒にできるたった1つの「終活」

―― でも、「いつか介護が必要になったとき、どのようにしてほしいのか」「認知症になってしまったとき、お金の管理はどうしたらいいか」……など高齢の親に聞いておきたいことは尽きません。

川内 心配なあまり、大事なことをお忘れかもしれませんが、「介護の仕方」も「お金」も、親がより良く生活していくための「手段の1つ」に過ぎません。なのに、どうしても手段から入る人は多い。

 それよりもまずは、親がどんな暮らしをしていきたいと思っているのかを深掘りしていくこと。5年後、10年後どうしていたいか。親が元気なうちに一緒にできる「終活」は、これだけで十分だと思っています。

―― とはいえ「これから先、どう暮らしていきたい?」なんていきなり聞いたら、両親に「突然どうしたの?」と不審に思われそうです。