親に介護が必要になったり、相続について話し合う必要が出てきたりすると、いろいろなトラブルが起きがちです。特に、きょうだいと意見が衝突すると長年にわたる骨肉の争いに発展することも。事前に知っておくべきポイントや準備しておけることを、専門家や経験者に取材しました。

相続や介護でもめたくない 親のこと、きょうだいのこと

 長年ひきこもる50代の子どもの生活を、80代の親が支える「8050問題」。親と子をめぐる社会課題として知られていますが、その裏にはひきこもり状態にある兄弟姉妹を持つ「きょうだい」の存在があります。

 「今は親が養っているけれど、親が亡くなったらどうすればいいの?」 ――人知れずこんな悩みを抱えるきょうだいが、自分の生活を守りながら問題に対処するにはどうすればいいのでしょうか? 「働けない子どものお金を考える会」の代表で、ひきこもりの子どもがいる家庭の生活設計相談を行っているファイナンシャルプランナーの畠中雅子さんに話を聞きました。

きょうだいがまず確認すべきは、親の財産状況

編集部(以下、略) 実は編集部員の友人にも、ひきこもり状態にあるきょうだいのことで悩んでいる人がいます。まずは彼女の悩みを紹介します。

事例:佐藤早苗さん(仮名、45歳、会社員、東京都在住)
 50歳の兄が約10年ひきこもり状態です。勤めていた会社を40歳で辞めてからは、再就職をすることもなく実家で両親と同居し、毎日自分の部屋でテレビを見たりインターネットをしたりしています。このままいけばさらに10年、20年とひきこもり状態は続き、いずれ親も亡くなるでしょう。そうなった場合、きょうだいである私はどうすればいいのか。私も自分の生活があるので、兄を扶養することは難しいです。親がいるうちに何かできる対策はないのか……と思いつつ、打ち明けづらい悩みなので誰にも相談できずにいます。

―― 畠中さんのもとにも、ひきこもり状態の人のきょうだいからの相談は増えているのでしょうか?

畠中雅子(以下、畠中) ひきこもり状態にある人が50歳を超えているケースでは、親ではなくきょうだいが相談に来るケースも多いですね。働けない兄弟姉妹が、親が亡くなったあと経済的に一人で暮らしていけるのかを確認しておきたいという相談をよく受けます。また、親が要介護状態になったり亡くなったりしたあと、途方に暮れたきょうだいが相談に来るケースもあります。

 ただ、親の死後、ひきこもり状態にある人の生活をどう成り立たせるかは、親の財産状況次第。まずは親の資産で一生分の生活費を賄い切れるのか確認する必要があるため、きょうだいが相談に来たいとおっしゃる場合でも、先に親の財産状況を把握してもらっています。親が財産状況を教えてくれないという場合は、ひきこもりの兄弟姉妹の生活設計を考える材料がないため、親の財産状況が分かるまで相談はお受けしていません。

―― では、親の財産状況はどのようにして確認するといいでしょうか?