リモートワークやオンライン会議が当たり前になってきた今。気軽にチャットでやりとりできる一方で、チームの団結力を引き出すことや、部下の状態を読み取るのが難しいという声も聞きます。すれ違いがちな1on1を成功させる秘訣や、チーム力を高める雑談のコツ、やる気を引き出すフィードバックなど、オンラインでのチームづくりに不可欠な新しいメソッドを紹介します。

オンライン時代の伝える力・聞く力

 年末になると毎年「新語・流行語大賞」が注目を集めますが、辞書でおなじみの三省堂が発表した「今年の新語2022」では、「○○構文」が2位に選ばれました。三省堂のサイトに掲載されている国語辞典風の語釈の一部を引用すると、「こうぶん【構文】〈名〉……②文章のひとまとまりを、ある方式によって作り上げたもの。『おじさん―・ご不快―』[用法]『おじさん―』とは、おじさんのメールなどにありがちな、多くの絵文字や、親しげな言いまわしをちりばめた、長ったらしいものを話題にするときに使う。……」とあります。

 おじさん構文から派生して、近ごろは女性ならではの特徴を持つ「おばさん構文」も話題にのぼっています。当人はもちろん「構文」を書いているつもりはないのですが、若い世代からは「おじさん、おばさんあるある」として扱われてしまうわけです。

 SlackやMicrosoft Teamsといったツールを使ってチーム内で日常的にやり取りしているメッセージの文面が、実は気づかないうちに部下や後輩を困惑させていたら……若者世代のネット利用やSNS事情に詳しいITジャーナリストの高橋暁子さん、私たち、どうしたらいいんでしょう(;´Д`)

高橋暁子 ITジャーナリスト、成蹊大学客員教授
高橋暁子 ITジャーナリスト、成蹊大学客員教授
東京学芸大学卒業後、東京都で小学校教諭、Webの編集者などを経て独立。書籍、雑誌、Webメディアの記事の執筆、企業のコンサルタント、講演、セミナーなどを手がける。SNSや情報リテラシー教育が専門で、スマホやインターネット関連の事件やトラブル、ICT教育事情に詳しい。『ソーシャルメディア中毒』(幻冬舎)など著書多数

Z世代はメールを使った経験がほとんどない

編集部(以下、略) テレワーク主体になったことで、仕事でもチャットツールなどを使ったテキストのやり取りがすごく増えました。編集部(みんな同世代)でも、「おじさん構文やおばさん構文、分かる!」なんて他人事のように話しているのですが、自分もどこかで無自覚にやらかしているのではと心配です。私たち40代、50代と若い人たちとでは、テキストでのコミュニケーションの「お作法」にかなり違いがあるのでしょうか?

高橋暁子さん(以下、高橋) はい、違いはすごくありますね。私たちがネット上でテキストのやり取りをするとき、ベースとなっているのはメールの作法です。メールは相手がいつ読むか分からない「非同期型コミュニケーション」。そのため1通で用件がすべて分かるよう、内容が完結していることが求められます。また、メールは手紙文化の延長線上にあるので、「宛名、あいさつ、本題、締めの文」といったように、作法もはっきりしています。

 かたやZ世代といわれる人たちは、子どもの頃からSNSやスマートフォンに触れていて、メールをほぼ使っていません。かつて、対面で話すとすごくしっかりしているのに、「メールがあまりにもなっていない」という理由でインターンの受け入れを断られてしまった男子学生から相談を受けたことがあります。どんなメールを送ったのかと見せてもらったら、件名もろくについておらず、名乗ることもなく、ただ「インターン希望です。よろしくお願いします」とだけ書いて送っていました。ほとんど使っていなかったせいで、メールの作法を知らなかったためです。

―― なんと……。

高橋 また、若い人たちはLINEをチャットのように使っていますが、文章を打つのが面倒だからほぼ単語のやり取りなんです。「今日ひま?」「うん」「15時渋谷」「おけ」みたいな。彼らは何度もメッセージをやり取りすることが前提。「短く、素早く送ること」が何より大事なんです。

 このように、大人世代と若者世代は、そもそもオンラインのテキストコミュニケーションの仕方が全く異なっています。そしておじさん構文、おばさん構文というのは、メール文化でコミュニケーションを取ってきた大人世代ならではの気遣いの表れといえます。

―― どういうことでしょう? 詳しく教えてください。