物価高が続き、社会保険料も年々増加の一途。コロナ下で家計悪化の懸念も大きくなるばかりです。一方で、少子化などを背景に「教育の質」に関心が高まり、首都圏では中学受験が過熱傾向にあるなど、「子どもへの手厚さ=教育費の負担増」となって、共働き家庭に重くのしかかっています。子どものためだからと、つい聖域にしてしまいがちな「教育費」ですが、長きにわたり子どもの将来をサポートしていく上で、必要となるお金はどれくらいになるのでしょうか。この特集では、マネーや教育のプロたちに話を聞き、これから私たちにふりかかる教育コストについて、様々な角度から検証していきます。晩婚、晩産化が進むなかで無理なく教育資金をためるには? 意外に家計を圧迫する想定外の「隠れコスト」とは? 最新の教育費事情を踏まえて、各家庭にとって教育費の「最適解」や将来後悔しないためのヒントを探ります。

「教育費」への配分、正解は?

 どの塾に通うのか、塾と個別指導や家庭教師を併用するのかなどによって、中学受験にかかる費用は大きく異なります。また、中学進学後にかかる学費も学校によってさまざまです。実際のところ、中学受験をするにあたってはどのくらいの費用をみておけばよいのでしょうか。中学受験専門塾スタジオキャンパス代表の矢野耕平さんと、IFA法人ガイアに所属するファイナンシャルプランナーの新屋真摘さんに聞いていきます。

受験費用は「塾代」以外の費用に注目

 中学受験をする場合に考慮すべき費用として、多くの人がイメージするのは「塾代」「受験料」「中学入学後の学費」ではないでしょうか。しかし、矢野さんとFPの新屋さんは、ともに「それだけでは不十分」と指摘します。

 「中学受験を考え始める保護者の多くは、『塾に通いさえすれば何とかなるだろう』と思っています。でも、実際に通塾を始めると、塾の勉強をフォローするための個別指導や家庭教師などにもお金がかかるケースが少なくありません。なぜなら1クラスの人数が多い大手集団塾の多くでは、授業はしてくれても、学習のフォローまでは行われないからです。

 小学校の授業とは違って内容も難しく、かつスピード感のある集団塾の授業を受けた後は、さらに詳しい解説を必要とするなど、多くの子どもたちが伴走してくれる大人を必要とする状態にいます」(矢野さん)

 子どもの中学受験を考える家庭から家計相談を受けることの多い新屋さんも、「有名進学校を目指す場合はオプション講座の受講を勧められたり、塾の授業についていけないと個別指導が必要になったりと、中学受験対策は、成績が良くても悪くてもプラスαの費用が発生しがちです。実際に想定していた塾代では収まっていないケースが多くみられます」と言います。

 また私立中学に進学後も、授業料以外にかかりがちな費用があるといいます。

 「中高一貫校では大学受験を見据えて早くから塾通いをすることも多い。特に通塾率の高い学校に入学した場合、学費のほかに入学後の塾代も視野に入れておく必要があります」(矢野さん)

 「部活の用具代や遠征費、習い事費が公立中より私立中に通う生徒のほうが高いというデータもあるほか、私立中では夏期講習などの費用を別に徴収されたりと、入学前には見えていなかった費用が発生するケースが多くみられるようです」(新屋さん)

 これだけの費用がかかることを考慮した場合、一つのモデルケース(※)として世帯収入1250万円の家庭が、2人の子どもを私立中に通わせることは可能なのでしょうか。

※夫の年収650万円、妻の年収600万円(新型コロナウイルス下で夫の勤め先の業績が低迷し、賞与がカットされたことにより、年収が100万円ダウン。祖父母などからの教育費の援助はなし)、夫39歳、妻36歳で第1子、夫41歳、妻38歳で第2子が誕生した世帯をモデルケースに、FPの新屋さんがシミュレーションし、分析した
本当にわが子を私立中に通わせられる?
本当にわが子を私立中に通わせられる?

 ここから、大手塾の月額費用や受験する学年での特別講習の費用なども一挙公開していきます。詳しくみていきましょう。