物価高が続き、社会保険料も年々増加の一途。コロナ下で家計悪化の懸念も大きくなるばかりです。一方で、少子化などを背景に「教育の質」に関心が高まり、首都圏では中学受験が過熱傾向にあるなど、「子どもへの手厚さ=教育費の負担増」となって、共働き家庭に重くのしかかっています。子どものためだからと、つい聖域にしてしまいがちな「教育費」ですが、長きにわたり子どもの将来をサポートしていく上で、必要となるお金はどれくらいになるのでしょうか。この特集では、マネーや教育のプロたちに話を聞き、これから私たちにふりかかる教育コストについて、様々な角度から検証していきます。晩婚、晩産化が進むなかで無理なく教育資金をためるには? 意外に家計を圧迫する想定外の「隠れコスト」とは? 最新の教育費事情を踏まえて、各家庭にとって教育費の「最適解」や将来後悔しないためのヒントを探ります。

「教育費」への配分、正解は?

親の安心感はわが子を育むことにはつながらない

 幼いうちに子どもの可能性を広げたいと、幼児期や小学校低学年のうちからスポーツや音楽、アートなどの習い事をさせたり、後々有利に働くはずと、英語や公文といった学習系の習い事をさせたりする家庭も少なくありません。中には週にいくつもの習い事を掛け持ちしている家庭もあるでしょう。でもこうした幼少期の習い事には慎重さが必要と話すのはファイナンシャルプランナーの清水香さんです。

 「小さい頃の習い事費用はそれほど高くないので、毎月の収支の中で比較的気軽に支払ってしまいがち。でも忘れてはいけないのが、小学校6年間、もしくは中学受験が本格的に始まる前までは、教育費の貴重なため期だということです

 残念ながら、今の子育て世帯を取り巻く現実は、社会保険料などの負担増に伴い給与の手取り額が少なくなる一方で、大学の学費をはじめとする教育費全般が値上がりを続けているという苦しいもの。「何とかなるだろう」で突き進むと、大学卒業までの教育費が足りないという事態に陥りかねないと清水さんは警鐘を鳴らします。

 「18歳時点で大学費用の一部として300万円はためたいところです。中学受験、もしくは中学・高校など大型出費が始まるまでに、児童手当が支給される家庭は児童手当を全額ためた上でさらに月1万円を、児童手当が支給されない家庭は月2万円を、教育費貯金に回せるよう調整しましょう」

 月1万~2万円を貯金に回すとなると、習い事に回せる予算はわずかという家庭も少ないはずです。習い事を厳選するには、どのような視点が必要でしょう。子ども教育の専門家で、子育てコーチングスクールを主宰する江藤真規さんは次のように話します。

 「『万人にとって意味のあるおすすめの習い事』というものはありません。その子にとって意味のある習い事にするためには、選び方、始め方、やめる決断など各ポイントで慎重な目線が必要になります。逆に注意が必要なのは、親の中にある『周囲に出遅れたくない』といった焦りの気持ちや『クロールで25メートル泳げるようになってほしい』といった成果主義に基づく考え方。そういった考えが、意味のない習い事をさせることにつながってしまいます」

 「これだけやっている」という親の安心感が、わが子を育むことにはつながらないと指摘されドキッとする親も少なくなさそうですが、「そもそも、長時間保育園や学童で過ごす共働き家庭の子どもの場合、大事な力はすでに身に付いているため、実は焦る必要はありません」と江藤さん。

 ここからは、貴重なため期にあえて習い事をする上で知っておきたい、「生きる習い事」にするために必要な視点について江藤さんに話を聞いていきます。

この記事で読める内容
・教育的視点からも習い事は最大〇つが限度

・保育園や学童で過ごす子がすでに身に付けている力とは?

・習い事は子どもが〇〇なことから選ぶ

・親が成果を求めてしがみついてはダメな理由とは?

・お金がかかる習い事以外にも、子どもが力を付ける場はたくさんある