物価高が続き、社会保険料も年々増加の一途。コロナ下で家計悪化の懸念も大きくなるばかりです。一方で、少子化などを背景に「教育の質」に関心が高まり、首都圏では中学受験が過熱傾向にあるなど、「子どもへの手厚さ=教育費の負担増」となって、共働き家庭に重くのしかかっています。子どものためだからと、つい聖域にしてしまいがちな「教育費」ですが、長きにわたり子どもの将来をサポートしていく上で、必要となるお金はどれくらいになるのでしょうか。この特集では、マネーや教育のプロたちに話を聞き、これから私たちにふりかかる教育コストについて、様々な角度から検証していきます。晩婚、晩産化が進むなかで無理なく教育資金をためるには? 意外に家計を圧迫する想定外の「隠れコスト」とは? 最新の教育費事情を踏まえて、各家庭にとって教育費の「最適解」や将来後悔しないためのヒントを探ります。

「教育費」への配分、正解は?

大学生の一人息子を抱え、今が教育費のピーク

 子どもの教育費にはいくらでもかけてしまいそうですが、人生100年時代、親世代の老後費用など、他にもお金を使うべきところはたくさんあります。教育費を「聖域」とせず、かつ子どもの希望をかなえるためにはお金のバランスをどのようにとったらよいのでしょうか。難関私大に塾なしで合格した子どもを持つファイナンシャルプランナーの清水香さんに、リアルな体験談を聞きました。

 清水さんの息子さんは、小学校から高校まで公立校に通った後、現在は都内私立大学の3年生。「まさに大学生である今が教育費のピーク」だと話します。

 「振り返ってみると、子どもが小さい頃の教育費は、それほど大きいものではありません。大学生になって教育費の大きさを痛感しました。まず入学金や授業料など初年度で130万円ほど大学に納めたほか、PCの購入や通学定期代など入学直後はひと月で30万円ほど出ていってしまいました」

 さらに、教育費そのものの高騰が続いていることにも要注意です。

 「例えば私が大学生だった34年前の授業料と比べると、国公立大学では約1.6倍、私立大学で約1.8倍になっています。さらに、息子の入学以降の新入生が負担する授業料は、年々上がっています

 OECD(経済協力開発機構)諸国のデータを見ると、日本では大学に相当する高等教育の教育費の5割以上を家庭が負担しており、公的支出は約3割に過ぎません。北欧の家庭による負担は1割以下で、ほとんど国が負担しています。日本では家計における教育費の負担が大きく、これからもっと上がる可能性もあります。

 昔に比べて税金や社会保険料の負担が増え、手取り収入が減っている一方、教育費はどんどん上がっているので、子育て世代はマネープランをしっかり立てる必要があります」

 さらに実感していることが、「子どもはいわば生モノ」だと清水さん。「息子は、大学の間に海外に行きたいといって1年間休学していたこともありましたし、3年生になって就職活動をすると思ったら『大学院に行きたい』と準備中です。『大学院のお金は出せないよ』と伝え、インターンや奨学金などで工面してもらう予定ですが、子どもは親と別人格であり、どのような人生を進むかは未知数であることを痛感しています」

 シングルで一人息子を育ててきた清水さんは、教育費を「聖域」にしないために工夫してきたことがあるといいます。次ページから詳しく聞いていきます。

この記事で分かる「教育費を聖域にしないコツ」
・習い事は、親からは子どもに○○○○○
・教育費は生活費など他の口座と○○○
・小学校までの勉強は○○○
・教育費を出すのは○○○○まで。○○○○○○○○○○費用は出さない
・高校卒業までの費用は○○費から出す
・「○○○○○○○○○○」と考え、備えておく