新春スペシャル対談「これが私たちの生きる道」
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1林真理子×勝間和代「私は日大理事長に向いてたと思う」
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2林×勝間 50代以降はお金をもらわない仕事を増やす
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3菊間千乃×奥本直子 「思い続ける」とある日道が開ける←今回はココ
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4ウェルビーイングを意識しない企業は変化に取り残される
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5折原みと×ひうらさとる 現役であるために変えないこと
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6折原みと×ひうらさとる「推し」「萌え」こそ大人に必要
主に企業法務専門の弁護士として活動し、複数の社外取締役も務める菊間千乃さんが今回、ぜひ対談したいと編集部に紹介してくれたのは、米ヤフー本社でバイスプレジデントなどを務めた後、現在はウェルビーイングをサポートするテクノロジーに着目した投資活動を行っている奥本直子さん。日本と米国でそれぞれ意欲的にキャリアを築いてきた2人が、働くことや新たな挑戦に向かうモチベーションの源泉について語り合います。
アナウンサーをしていたから、弁護士になりたいと思えた
奥本直子さん(以下、奥本) 菊間さんと初めて会ったのは2021年の夏でしたね。ISAK(軽井沢にあるインターナショナルスクール)のサマースクールに息子を送り届けるために軽井沢に来ていたとき、フォーブスジャパン編集長の高野真さんから「別荘でパーティーをするからいらっしゃい」と誘われました。それで行ったら菊間さんがいらっしゃって。年の近い女性が多くて、みんなで楽しく話しましたね。
菊間千乃さん(以下、菊間) 初めて会ったとは思えないくらい盛り上がりましたよね。(フリーアナウンサーの)草野満代さんと3人で、ワインを飲みながらずっとしゃべって。気が合う人って、会った瞬間からなんですよね。「奥本さんがまた日本に来たときにお会いしましょう」と話して、今日に至ると。
奥本 改まって仕事のことを話すのは今回が初めてですよね。私、早い時期に日本を出てしまったので、「菊間さんって有名人だよ」と高野さんに聞いて、インターネットで調べたんです。そうしたら、以前はフジテレビの花形アナウンサーで、その後弁護士に転身したと知りました。アナウンサーから弁護士って、すごく奇想天外だなと。
菊間 奇想天外!(笑)
奥本 弁護士というと、誰かを助けたいとか、社会正義への思いが背景にあったのかなと想像するのですが、いろいろな職業がある中でなぜ弁護士だったのか、とても気になります。
菊間 私は法学部出身で、ゆくゆくは司法試験を受けたいとは思っていたんです。ただ、心から弁護士になりたいと思えたのはアナウンサーの経験が大きかった気がします。
私がテレビの世界を志したのは、骨髄バンクを扱ったある番組を見てものすごく心が揺り動かされ、翌日骨髄バンクの登録に行ったことがきっかけです。それまでも骨髄バンクの存在は知ってはいたけれど、「そういうものがあるんだ」と思うだけで、行動に移すということはありませんでした。情報の見せ方、伝え方次第で、人の心に刺さって、行動につながる。それってすごいことだと思いました。
アナウンサーの仕事はとても楽しかったのですが、経験が増えるにつれ、葛藤も抱くようになりました。一番大きかったのはいじめ問題です。いじめ問題は数年おきにクローズアップされるんですよね。何か象徴的な事件があるとマスコミが注目してわーっと報道する。私も情報番組で、「いじめは社会全体の問題として考えなくてはいけない」みたいな発言をしたりしていました。
ただあるとき、「私は数年前にも番組で同じようなことをしゃべっていたんじゃない? 偉そうにコメントしていたけれど、あれから今までこの問題について何もしていないじゃないか」と思ったんです。自分がすごく偽善者のような気がしてきました。