2023年最初のARIAの特集は、互いをリスペクトしている3組の女性たちのスペシャル対談をお届けします。思い切った決断をした背景には何があったの? 新しいことに挑戦するエネルギーはどこから生まれてくる? これからの人生、何を大切にしていく? 本音トークや心に刻みたい金言が次々に飛び出した対談記事を読めば、自分らしく生きる道を探すためのヒントがきっと見つかります。

新春スペシャル対談「これが私たちの生きる道」

 少女漫画家として30年以上、第一線で創作を続ける折原みとさんとひうらさとるさん。後編では創作の源になっている価値観や経験、人生を豊かに過ごす「推し」について語り合います。

ずっと小学生のボーイフレンドがいた

編集部(以下、略) 創作に必要なインプットは、具体的にどんなことをしているのでしょうか?

折原みとさん(以下、折原) 世代や職業を問わず、さまざまな人と話をするのも、すごく刺激になります。私、ずっと小学生のボーイフレンドがいたんです! 友達の子どもで今はもう高校生。彼とは一緒にテレビゲームをしたり、外で遊んだりしていたの。どちらが子どもか分からないくらいだったかも(笑)。あと、近所の人や参加しているコミュニティなどで、いろいろな人とコミュニケーションを取るのもすごく楽しいですし、学びが多いですね。

ひうらさとるさん(以下、ひうら) 私も人の話を聞くのは好きですね。先日、娘の友達から理系コースに通う男子高生と女子高生のあるエピソードを聞いて、感動したんです。ざっくり話すと数式が2人の距離を縮める……っていう内容。さっそく漫画に生かそうと思いましたね。やっぱり、頭で考えているよりも人の話を聞いたり、場所を変えたり、五感を使ったりしたほうがアイデアが湧いてきますね。「事実は小説より奇なり」といいますが、本当にそうだと思います。

折原 ものを描(書)いていると、自分が登場人物の視点に立つから、自分に起こる出来事はすべて創作の貯蓄になるんですよね。たとえ失敗したとしても、すべて「話の種」だと思える。何か起こるたびに自分を俯瞰(ふかん)しているから、「この経験は何かの役に立つ」とか「笑いに変えられないかな」って前向きに捉えるようになりました。

ひうら 自分を俯瞰するって大事ですよね。自己評価を高過ぎず低過ぎず、いいあんばいに保つことが創作を続けるコツかもしれませんね。私はデビュー当時から自分に才能があるとは思えなくて、20代、30代は特に「人の何倍も努力しなきゃ」と思ってやってきました。結果が出なくてもいちいちへこまず、淡々とやり続けることが大事。

折原 そうそう。思い詰めて、負のループに陥ったらダメよね。映画『魔女の宅急便』(監督・宮崎駿)の「おちこんだりもしたけれど、私はげんきです。」って言えるくらいでないと(笑)。

対談の後半はアンティーク調の家具に囲まれた折原さんの自宅リビングで行われました
対談の後半はアンティーク調の家具に囲まれた折原さんの自宅リビングで行われました