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保育園大好きだった娘がまさかの不登校
「娘が学校に行けなくなるなんて、まったく想像していませんでした。保育園時代は、土日でも園に行きたいと泣き出すくらい保育園が大好きだったんです。小学校への入学も本当に楽しみにしていて。そんな娘が不登校になるなんて、まさに青天の霹靂(へきれき)でしたね」
そう話してくれたのは、サイボウズで財務経理を担当する共働きママの田中那奈さんです。田中さんが娘の異変に気づいたのは、娘が1年生の夏休み直前だったそう。入学後、毎日元気に登校していた娘が、突然朝に発熱するようになったのです。
「それまで『学校に行きたくない』とは一切言ってなかったので、発熱したときも、頑張りすぎてちょっと疲れちゃったのかな? くらいに思っていました。けれども何日かすると、朝は熱があるのに、学校を休むことが決まると元気になる、という状態になって。あれ、おかしいなと思いつつ、『元気だから学校に行ってみない?』 と登校を促したところ、娘の口から初めて「もう行きたくない」という言葉が出たんです」
理由もわからないまま始まった娘の不登校生活。どう動けばいいのか正解がわからず、悩みや不安に押しつぶされそうになることもあったそうです。前を向いたきっかけは何だったのか、現在娘はどう過ごしているのか。田中さんに聞いていきます。

ママ友や先生の「無理してでも行かせたほうがいい」声に迷う日々
夏休み直前だったということもあり、「夏休みでリフレッシュしたら、また行けるようになるかも」とそのまま休ませることに。けれども夏休みの終了直前、田中さんが「明日から学校だよ」と告げると、娘は大泣きしてしまったそうです。「これは本当に学校に行きたくないんだな」と思いつつも、田中さんは毎朝、大泣きする娘を引きずるように家から出して登校させていました。そこには、先生やママ友の「はじめに長く休むと休み癖がつく」「誰でも通る道だから、行かせちゃえば大丈夫だよ」という声も影響していたそうです。
「でも結局、1週間くらいで私のほうが『もう無理』ってなりました。もともと、そんな号泣するようなタイプの子じゃないのに、毎朝悲しそうに大泣きして、しゃべれないくらいになっているのを見て、『本当に行きたくないんだな』と思って。私のほうが精神的につらくなってしまったんです」
周囲からは「行かせたほうがいい」と言われ、休ませていいのか迷いもありました。ネットで調べても、「ひとまず休ませて子どもに寄り添うべき」「親子関係に問題がある」など、さまざまな意見が出てきて、どれが正解なのかもわかりません。娘もまだ小1ということもあり、なぜ行きたくないのかを言葉にできなかったそうです。「この頃が一番、精神的にしんどい時期でした」と田中さんは振り返ります。
「ちょうどその頃、社内で利用しているグループウェアの日報コーナーに、『子どもが学校に行けない』というようなことをポロッと書いたんです。そうしたら、いろんな人が『いいね』してくれたり、同じ部署の人がコメントをくれたりしたんです。社内で吐き出したことで少し冷静になれて、『仕事で壁にぶつかった時と同じで、一回本質に立ち戻ったほうがいいんじゃないか』と気づいたんです。どういう状態が娘にとって理想なんだろう。そもそも学校って、ここまでして行かせるべきものなのかな、と考え始めたんです」
そうして、田中さんは、娘を学校に行かせないことを決め、不登校生活が始まりました。
