40代あたりからガクンと体力が落ちたと感じたり、お肌のハリ・ツヤがなくなってきたりしたと感じることが増えていませんか? 「仕方がないよね」とあきらめるのはまだ早い。カラダは何歳からでも変えられるのです。それを体現する方々が日ごろどんなことを実践しているのか、その秘密をしっかり聞いてきました。

何歳からでもカラダは変わる

 シニア世代であろうと衰えを感じさせることなく活躍している人の代表格ともいえるのが、2022年に80歳を迎えた松本白鸚さん。現役生活をキープし続けている背景には、パーソナルトレーナーの本橋恵美さんの存在がありました。白鸚さんは、歌舞伎の舞台のほか、23年4月に公演予定の舞台「ラ・マンチャの男」で主役ドン・キホーテを演じるため、今も本橋さんのもとでトレーニングを続けているといいます。シニア世代から多くの支持を集め、「何歳からでも体を変えることはできる」と断言する本橋さんに、40~50代の私たちが今からできること、意識しておくべきことを教えてもらいました。

79歳で20kgの衣装を着て片足跳びする見せ場をこなす

編集部(以下、略) 実は私、2022年2月の松本白鸚さん主演舞台「ラ・マンチャの男」を生で観劇したのですが、79歳であれだけの長時間舞台に出続けるだけでもすごいことなのに、重そうな甲冑(かっちゅう)風の衣装を着け、さらに大きな槍(やり)を振り回し、舞台上を縦横無尽に駆け回るその快活ぶりに圧倒されました。

本橋恵美さん(以下、本橋) ちょうどその1年くらい前の21年の初めごろ、白鸚さんからパーソナルトレーニングの依頼を受け、初めてお会いしたんです。そのときは2カ月後に歌舞伎「勧進帳」の武蔵坊弁慶の役が控えているということで、それまでに体力を元に戻したいということだったんです。

 歌舞伎界は新型コロナウイルスの影響で1年間休演が続き、白鸚さんはその間体を動かしていなかったそうで、すっかり体力が落ちていらっしゃいました。トレッドミルというウオーキングマシンでの歩行は少し不安定な状況で、2カ月後に弁慶を演じるためには十分な気合と体力が必要でした。

 弁慶の役には「飛び六方(ろっぽう)」という大きな見せ場があって、約20kgの衣装とかつらを着けて、片足跳びしながら花道を駆け抜けるという大変な動きがあるんです。

 とにかく引き受けたからにはなんとかして舞台に立ってもらおうと思い、トレーニングを開始しました。そして、舞台で堂々と弁慶を務められた姿を見たときは、感動して涙が止まらなかったですね。

本橋恵美 一般社団法人 Educate Movement Institute 代表理事/E.M.I. 代表取締役
本橋恵美 一般社団法人 Educate Movement Institute 代表理事/E.M.I. 代表取締役
もとはし えみ/1972年、東京都生まれ。障害予防と機能改善を目的としたコンディショニングトレーニングをメインにコーチングを行う。スポーツ医科学に精通したトレーナーの育成事業も展開。その他、学会発表やスポーツ医学の論文執筆、病院・大学とヨガ・ピラティスに関する共同研究を行う。2023年春に徳島大学医学部大学院に入学し、脊椎外科医の西良浩一教授のもと、モーターコントロールに関する共同研究を実施予定

―― その2カ月間はどのようなメニューをこなしていたんですか?